今週末に見たいアートイベントTOP5: 日本で約30年ぶりの新作個展「ケニー・シャーフ展」、韓国のソジョンアートが4作家を紹介「Instead of a result, a process」
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 長谷川寛示 個展「decay, remains」(KANA KAWANISHI GALLERY)
僧侶でありアーティストの長谷川が手わざと思考を凝縮させ作り上げる彫刻
長谷川寛示は、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了後、曹洞宗大本山永平寺での修行を経て僧侶になり、現在はアーティストとして制作活動を行なう。形象や素材に付随する概念や時間軸の異なるものを掛け合わせ、ごく自然にひとつの世界に調和を作り出す長谷川は、これまでも大麻草、芥子、薔薇、蓮、外来種の雑草など、固有の由来を持つ植物を、自ら制作するさまざまな花器と組み合わせて発表してきた。
本展では、自身にとって初めて枯れゆく植物をモチーフにした。「彫刻は時間を伝えるメディウムである」と強調してきた長谷川が、地上すべてのものに平等に作用する時間や、種にかかわらず、あらゆる生命に等しく与えられた寿命などに思いを巡らせながら、手わざと思考を凝縮させ作り上げた作品群を展示する。
長谷川寛示 個展「decay, remains」
会期:5月27日(土)~ 6月24日(土)
会場:KANA KAWANISHI GALLERY(東京都江東区白河4-7-6)
時間:13:00 〜 19:00
2. 今井壽恵「オフェリアその後」(CADAN有楽町)
文学的な世界を構築した前衛写真、今井壽惠の初期作品に光
1950年代にデビューした女性写真家・今井壽惠(1931-2009)。「オフェリアその後」に代表される文学的な世界を構築し、その前衛的なイメージで注目を集めた。タクシー乗車中に衝突事故に遭い、一時的な失明の危機に晒されてからは、馬を被写体にした作品制作に移行。その初期作品は次第に知る人ぞ知るという状況になっていった。
2022年4月にThe Third Gallery Ayaで開催した展覧会の巡回展となる本展では、今井の初期代表作を紹介する。1956年の初個展「白昼夢」から1964年に始まった「エナジー」までを展開。6月17日(土)16:00から、写真史家・戸田昌子のトークイベントを開催(インスタグラム@cadan_instaよりライブ配信あり)。
今井壽恵「オフェリアその後」
会期:6月8日(木)〜 6月25日(日)
会場:CADAN有楽町(東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F)
時間:11:00 〜 19:00(土曜と日曜は17:00まで)
3. ケニー・シャーフ「I’m Baaack」(NANZUKA UNDERGROUND、草月会館)
ポップアートのパイオニアが日本で約30年ぶりの新作個展
1958年生まれのアメリカ人アーティスト、ケニー・シャーフ。1980年にニューヨークのSchool of Visual Artsを卒業後、アンディ・ウォーホルをメンターに、グラフィティやコラージュを主な表現スタイルとする「イースト・ヴィレッジ・アート・ムーブメント」の一員として、バスキアやキース・ヘリングらと共に脚光を浴びた。これまで、カラフルな色彩と独自のキャラクターが特徴的な作品を生み出してきた。
今展は約30年ぶりとなる新作個展。今回のためにシャーフが描き上げた新作には、変幻自在に形を変え、動き回る表情豊かなキャラクターたちが登場する。また日本語の新聞から集めた「温暖化」「見えぬ道筋」「医療システム整備」など、社会的なテーマに関するキーワードが散りばめられている。そのほか、日本初公開となるインスタレーションも発表する。
今展は、NANZUKA UNDERGROUNDと草月会館の2会場で開催。草月会館では、イサム・ノグチ石庭での新作インスタレーションに加え、シャーフ自身がペイントと改造を施したキャデラック「夢の車」が38年ぶりに公開される。
ケニー・シャーフ「I’m Baaack」
会期:6月10日(土)〜 7月9日(日)(草月会館は6月30日まで)
会場:NANZUKA UNDERGROUND(東京都渋谷区神宮前3-30-10)、草月会館(東京都目港区赤坂7-2-21)
時間:NANZUKA UNDERGROUNDは11:00 〜 19:00、草月会館は11:00 〜 16:00(金曜と土曜は17:00まで)
4. ガウディとサグラダ・ファミリア展(東京国立近代美術館)
100点超の資料からガウディの建築思想と造形原理をひもとく
スペインのバルセロナ市内に点在するカサ・ビセンス、グエル公園、カサ・バッリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリア聖堂など世界遺産に登録された建築群を手がけたアントニ・ガウディ(1852‐1926)。西欧のゴシック建築やスペインならではのイスラム建築、さらにカタルーニャ地方の歴史や風土などを深く掘り下げることで、時代や様式を飛び越える革新的な表現に到達した。
今展では、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を当て、100点超の図面、模型、写真、資料に最新の映像を交えながらガウディの建築思想と造形原理を読み解く。ガウディの創造の源泉や、独自の制作方法に注目するとともに、「降誕の正面」を飾る彫像も自ら手がけるなど建築・彫刻・工芸を融合する総合芸術志向にも光を当て、ガウディ建築の豊かな世界に迫る。会期中は一部展示替えあり。
ガウディとサグラダ・ファミリア展
会期:6月13日(火)〜 9月10日(日)
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
時間:10:00 〜 17:00(金曜と土曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
5. Instead of a result, a process(M5 Gallery)
4人の韓国人アーティストの複雑な世界観が顕在化していく過程に迫る
ソウルと釜山に拠点を構えるギャラリー、ソジョンアートによる展示。世代を超えた4人の韓国人アーティストがそれぞれに探求するテーマが、絵画や彫刻の表現にどのように影響を与え、作品として昇華させているのか、その過程に迫る。ジャック・ラカンの精神分析をもとに、アート作品が「現実界」「象徴界」「想像界」の領域を同時に伝達する能力をもつことを考察し、身振り手振りを通して、アーティストの複雑な世界観が顕在化していく様を描き出す。
展示作家は、イ・チュンファン、ホン・スン、ホン・ソンジュン、ピ・ジョンウォン。ホン・スンは、自然や人間、社会・政治的な側面から得たイメージを、特定のセグメントに焦点を当てることで再文脈化し、キャンバス上で組み替えたペインティングを展示する。ピ・ジョンウォンは、「Black Path」シリーズの大きな絵画作品を発表。韓国の墨(ムク)やジェッソを純粋な抽象表現としてネガティブスペースに使用し、重厚なマチエールを何層も塗り重ねることで、亀裂や集積を生じさせ、ネガティブスペースの制御された無意識を壊すプロセスを精緻に表現する。
Instead of a result, a process
会期:6月14日(水)〜 6月20日(火)
会場:M5 Gallery(東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル1F)
時間:12:00 〜 19:00