ARTnewsJAPAN

ヴァシュロン・コンスタンタンがメトロポリタン美術館とパートナーシップを締結。芸術、専門技術、知識の保護継承を目指す

ヴァシュロン・コンスタンタンとニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)は、芸術と専門技術、そして知識の保護継承という共通の使命に基づき、パートナーシップを締結した。今後ヴァシュロン・コンスタンタンは、こうした使命を実現するためのMETの活動を支援するとともに、二者の協力による様々なイベントを開催していく予定だ。

メトロポリタン美術館(MET)内のギャラリー、アメリカンウィングの中庭。Photo: ©Courtesy of The Met

芸術・文化からのインスピレーションがメゾンの発展を支持

世界三大時計ブランドに数えられるヴァシュロン・コンスタンタンの創業者、ジャン=マルク・ヴァシュロンは、1755年の創業時から「知と技巧の伝承」こそがメゾンの無二の独自性・卓越性を担保するものであるとして、5年にわたり若い見習いたちに時計製造技術を教えることを「徒弟契約書」の中で約束していた。以来、同メゾンはこの精神に則って常に知識や技巧の向上に努め、約2世紀半以上におよぶ豊かな歴史を築き上げてきた。

ヴァシュロン・コンスタンタンのアトリエで働く職人たち。Photo: ©Maud Guye Vuillème

ヴァシュロン・コンスタンタンのCEO、ルイ・フェルラが「メゾンの芸術と文化への取り組みは、常に尽きることのないインスピレーションの源であり、そこから学んだ美の創造と表現の自由が、メゾンのクリエーションを支えている」と語る通り、創造と革新に支えられるメゾンの発展において、常に重要なインスピレーションとなってきたのが芸術だ。

2019年にはパリ・ルーヴル美術館とパートナーシップを締結2020年には、ルーヴル美術館の活動を支えるためのチャリティオークション「Bid for the Louvre」を開催し、ルーヴル美術館所蔵のアート作品の中から落札者が選んだ一点を文字盤上に再現するというビスポークの「レ・キャビノティエ」を出品した。

また、One of Not Many(少数精鋭の一員)という言葉を冠した二つのプロジェクトを展開しており、一つは、それぞれの領域で独自の表現を追求するアーティストやクリエーターたちをキャンペーンに起用するというもの。今年は新たに、アメリカ人アーティストで探検家のザリア・フォーマンがこのメンバーに加わった。そしてもう一つは、「知と技巧の伝承」を重視してきたメゾンならではのメンターシッププログラム。これまで、One of Not Many(少数精鋭の一員)にも選ばれたニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・ダンサー、チュン・ウェイ・チャンや、イギリスの伝説的音楽スタジオ、アビーロードとのコラボレーションで世界的に著名なフランス人音楽家でアーティスティック・ディレクターであるウッドキッドといった豪華布陣をメンターに迎え、若きアーティストを支援している

「芸術、専門技術、知識の保護継承」を通じた新たな価値創造

ヴァシュロン・コンスタンタンCEOのルイ・フェルラ(左)とメトロポリタン美術館のCEO、マックス・ホライン(右)。Photo: ©Paula Lobo/The Metropolitan Museum of Art

今回のメトロポリタン美術館(MET)とのパートナーシップの詳細は明かされていないが、1870年に設立された同館は芸術の研究機関として、年齢や経験、障がいの有無に関わらず誰もが芸術に親しめるよう、その教育部門を通じて年間29000もの教育イベントやプログラム、メンターシップを提供している。今後、両者に共通する「芸術、専門技術、そして知識の保護継承」という理念の実現に向けた教育プログラムの開発はもちろん、そこから生まれる新しい表現を取り入れたユニークピースのリリースといった、未来に向けた様々なコラボレーションが展開される可能性がある。METCEOであるマックス・ホラインは、今回のパートナーシップにこう期待を込める。

「私たちは、ヴァシュロン・コンスタンタンとのパートナーシップを大変嬉しく思っています。ヴァシュロン・コンスタンタンは、創造性を讃え、芸術の伝統を守る、尊敬される時計メゾンであり、その長年の努力と一致する我々の使命を支援してくださることに感謝しています。私たちは、教育と芸術への相互のコミットメントを基盤に、今後、数々のプロジェクトを一緒にできることを楽しみにしています」

メトロポリタン美術館の外観。Photo: ©Courtesy of The Met

フェルラが「2世紀にわたり、『アメリカン1921』をはじめ、メゾンを象徴するタイムピースの数々がアメリカのコレクターと顧客のために生み出されてきた」と言う通り、アメリカ、中でもとりわけニューヨークは、メゾンにとって重要なマーケットであり続けてきた。記録を辿ると、メゾンは1811年に大西洋横断通商に従事する商人と取引をスタートし、以後、ニューヨークを中心に、その時計の認知をアメリカ国内で確立していった。そんなメゾンとゆかりの深い場所を代表する美術の専門機関、METとのパートナーシップがどんな新たな価値をもたらしてくれるのか。これからの展開が楽しみだ。

あわせて読みたい