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スペインの環境活動家らを「犯罪組織」として一斉逮捕。美術館での抗議行動の損害は、約8000万円

ヨーロッパ各地の美術館で数々の抗議行動を行ったとして、環境活動家のグループがスペイン当局に逮捕された。警察の発表によると、逮捕された22人は65件のデモに関係し、交通を遮断したり、政府所有地にペンキや粘着性のある物質を撒いたりするなどの行為をしていた。

2019年12月にスペイン・マドリードで開催されたCOP25(第25回国連気候変動枠組条約締約国会議)の期間中、地球温暖化対策を求めるデモを行い、プラド美術館前で旗を掲げる活動家。COP25は反政府運動の激化で開催を断念した南米チリに代わり、スペインで実施されることになった(2019年12月6日撮影)。Photo: Sergio Belena/VIEWpress, Corbis via Getty Images

警察当局の報道官がAFP通信の取材に答えたところによると、逮捕された活動家たちが所属していたのは「フトゥーロ・ヴェへタル(Futuro Vegetal)」というスペインの活動家グループ。同グループは、海外の支援者から14万ユーロ(約2200万円)以上の寄付を集めており、2022年11月、所属メンバー2人がマドリードのプラド美術館にあるフランシスコ・デ・ゴヤの有名作品の額縁に手を貼り付けるなど、65件のデモに関与していた。

プラド美術館でのアートアタックでは、幸い、接着剤が付けられた《着衣のマハ》と《裸のマハ》に致命的なダメージはなかった。2つの絵の間の壁には「+1.5℃」という文字が大きく書かれていたが、これは、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定で掲げられた、世界平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃に抑えるという目標を表している。

近年、環境活動家たちは気候変動への注目を集めるために世界中の美術館で抗議を行っており、その内容は年を追うごとに過激になっている。たとえば昨年6月、スウェーデン・ストックホルムの国立美術館でクロード・モネの《ジヴェルニーの画家の庭》に赤い塗料を塗りつけた活動家が逮捕され、2022年10月にはイギリスの環境活動グループ「ジャスト・ストップ・オイル」のメンバーが、ロンドンナショナル・ギャラリーフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけた。

スペイン警察は、逮捕された22人の活動家が「犯罪組織」を形成し、50万ユーロ(約8000万円)を超える損害を与えたとしている。一方のフトゥーロ・ヴェへタル側は、X(旧ツイッター)に投稿した声明で12月の逮捕の事実を認めている。(翻訳:石井佳子)

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