バンクシー最新作がグラストンベリーに出現! 移民を乗せたボートでスナク政権の過酷な政策を批判
神出鬼没の覆面アーティスト、バンクシーの最新作が、毎年20万人以上の参加者を集めるイギリス最大級の音楽フェス、グラストンベリー2024に突如現れた。イギリスのポストパンク・バンド、アイドルズの演奏中のことで、バンドメンバーにとってもサプライズだったという。
6月29日夜、イギリスの大規模音楽フェス・グラストンベリー2024では、パフォーマンス・アーティストのマリーナ・アブラモヴィッチが観客と7分間にわたる沈黙の時間を共有。それは、我われが今「人類史上における暗黒の瞬間」にあることを示し、平和に思いをはせるためのものだった。さらにその晩、もう1人のアーティストによるサプライズがフェアの参加者を待っていた。世界各地の街中にグラフィティ的な作品を忽然と出現させる正体不明のアーティスト、バンクシーだ。
バンクシーの最新作が登場したのは、イギリスの人気ポストバンク・バンド、アイドルズのパフォーマンス中のこと。移民を乗せた膨張式の救命ボートを模したものが会場に投げ込まれ、観客の間をクラウドサーフィンしていった。英ガーディアン紙の第一報によると、アイドルズのメンバーもバンクシーの計画を知らなかったという。
救命ボートは、アイドルズが「Danny Nedelko(ダニー・ネデルコ)」を演奏している最中に出現したと報じられている。この曲は移民のことを取り上げたもので、歌詞には次のような一節がある。
「恐怖はパニックに、パニックは痛みになる/痛みは怒りに、怒りは憎しみになる」
6月30日、バンクシーはアイドルズの演奏中に観客の頭上を移動する救命ボートの動画をインスタグラムに投稿し、自らの作品であることを事実上認めている。
バンクシーはこれまでも移民をテーマにした活動を行ったことがあり、2020年には難民救出の輸送船に資金を提供。船体に救命浮き輪のようなハート型の風船に向かって手を伸ばす少女を描いているが、これは代表作である赤い風船に手を伸ばす少女をもとにしたものだ。しかしこの船は、地中海での救助船の活動を規定した法令に違反した疑いで、2023年にイタリア当局に押収された。
今回の最新作は、イギリスのスナク政権による厳しい不法移民施策に批判の目が向けられる中で発表された。特に問題となっているのは不法入国した移民をルワンダに強制移送する法案で、同法案は与党保守党内でも根強い反対意見をスナク首相が押しのける形で可決されている。(翻訳:石井佳子)
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