Tokyo Gendai週間がスタート! 六本木アート地区に、業界の重要プレイヤーたちが大集結
雨雲に覆われた7月2日火曜日の夕方、4日のVIPプレビューからスタートするTokyo Gendaiiの前夜祭的な催しが、六本木アート地区で開催された。その様子をUS版ARTnews編集長、サラ・ダグラスがレポートする。
雨雲に覆われた7月2日火曜日の夕方、小山登美夫やシュウゴアーツ、タカ・イシイ、そしてペロタンなどのギャラリーが集まる東京・六本木のアート地区に、アーティスト、コレクター、ディーラーなどが大集結した。そこには、4日のVIPプレビューからスタートするTokyo Gendaiの創設者であるマグナス・レンフリューや、Tokyo Gendaiに出展するロンドンのギャラリスト、サディ・コールらの姿もあった。各ギャラリーではオープニングを祝うシャンパンやカナッペが供され、メインギャラリーを構えるビルの2階に世界で3拠点目となるサロン・スタイルの新スペースをオープンさせたペロタンは、ギャラリーに隣接するショップで、日本の夏の風物詩であるかき氷も振る舞っていた。
昨年の第1回Tokyo Gendaiは、同フェアが発表したレポートによれば概してポジティブな結果だったが、アートフェア・ビジネスに携わる者なら誰でも知っているように、2年目こそが本当の試練だ。2023年からの1年間で世界のアート市況はずいぶん変わり、コロナ禍で取引が活発化した若手アーティストの作品は今やかなり冷え込んでいる。ドル高円安は、日本に作品を買いに来るアメリカ人にとっては好都合だが、日本のアートコミュニティにドル建てで作品を売るディーラーにとっては、決していい状況とは言えない。
しかし、そもそもアートフェアは長期戦だ。そして、ペロタンの拡大やPaceが9月の東京拠点グランドオープンに先駆けて6日からプレビューを開催するという事実は、東京のアート市場の盛り上がりを十分に裏付けていると言える。誰よりもそれを体感しているのは、レンフリュー自身だろう。彼はアート・バーゼル香港の前身であるアートHKのファウンディングディレクターを務めた人物だ。
アートHKがアート・バーゼル香港に名前を変えた2007年当時、香港に進出していたメガギャラリーは皆無だった。そんな中、香港の市場としての可能性をいち早く嗅ぎつけたのは、ガゴシアンだ。同ギャラリーは2011年に香港拠点をオープンし、今年9月には、第3回フリーズ・ソウルの開幕に合わせて独自の空間こそ持たないがソウルに進出することが決まっている。同ギャラリーは、ARTnewsトップ200コレクターに名を連ねる韓国のコレクター、ス・ギョンベ率いる化粧品最大手のアモーレパシフィック本社内にあるアモーレパシフィック美術館の併設スペース(APMAキャビネット)で、デリック・アダムスの個展を開催するのだ。ちなみにソウル市場には、2017年にPaceが拠点をオープンしている。
日本に話を戻すと、この市場について確実に言えることは、日本には新しい世代のアートコレクターが存在している、ということだ。あるディーラーは、ZOZO創業者の実業家、前澤友作の「影響力の大きさや投機的な側面に対しては賛否両論ある」とした上で、彼が2017年のオークションでジャン=ミシェル・バスキアの絵画を123億円で購入したことがきっかけとなり、それに続くように若い世代のアートコレクターたちが生まれたことは事実だと語る。
東京にはもちろん、森ビルで知られる森一族のような古参もいる。森ビルは2003年に開業した六本木ヒルズの中に森美術館を設立し、昨年オープンしたトーマス・ヘザウィック設計の麻布台ヒルズの中に、森美術館の分館である麻布台ヒルズギャラリーをオープンしている。こけら落とし展は、オラファー・エリアソンだった。東京では、例えばニューヨークであればチェルシー・アート地区のように、アート市場と不動産開発は密接に結びついているのだ。
さて、レンフリューらが昨年、第1回Tokyo Gendaiが開催できた背景には、保税資格を取得できたことが大きい。今年は、これが実際にどうフェアでの売れ行きに作用するかを測る機会となるだろう。レンフリューは、「日本のアートマーケットは、論理的にあるべき姿から遅れている」と語っているが、日本がどんなふうに遅れを取り戻していくかは、今年以降、明らかになっていくはずだ。