女性用トイレのピカソが贋作と判明! 「男子禁制展示」のキュレーターが陳謝
オーストラリア・タスマニア州の美術館、ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー(Mona)の男子禁制のインスタレーション内に、パブロ・ピカソの贋作が展示されていることが、このほど明らかになった。これ以外にもオブジェクト数点が偽物であることが判明しており、「男性の存在を忘れるために華やかさが必要だった」とキュレーターは語っている。
男子禁制のインスタレーション《レディース・ラウンジ》がジェンダー差別にあたるとして撤去されたことが話題になった、オーストラリア・タスマニア州に拠点を置く美術館、ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー(Mona)が再び物議を醸している。
というのも、同インスタレーションに展示されていたパブロ・ピカソの絵画が贋作だったことが明らかになったのだ。ピカソ作品はそもそも《レディース・ラウンジ》内でのみ見ることができたのだが、インスタレーション撤去後は、美術館が新たに設けた女性用トイレに飾られていた。しかしこの作品は、実は《レディース・ラウンジ》をキュレーションしたアーティスト、カーシャ・ケイシェルによって描かれたという。
ピカソの遺産管理団体とオーストラリア版ガーディアン紙からの指摘を受け、Monaは同紙の取材に対して贋作であることを認めた。
2020年から公開されていた《レディース・ラウンジ》では、男性パフォーマーが演じる執事たちが、訪れた女性にシャンパンを振る舞うといったパフォーマンスが行われていた。しかし、このインスタレーションが女性のみに公開されていることを不服とした男性の来館者が訴えたことにより、裁判所は、本作がタスマニア州の反差別法に違反しており、男性も入場させなければならいという判決を下した。これを受けて、インスタレーション内で披露されていた偽のピカソ作品は、女性用トイレの個室に移された。
答弁においてケイシェルは、「(この展覧会は)女性たちが特定の空間に入ることを禁じられていたというオーストラリアの歴史に対する女性側の反発」だと発言。また、Monaが訴えられたことは「喜ばしいことだ」と発言していた。
贋作であることが指摘されるまでMonaは、ピカソの愛人だったとケイシェルが主張する彼女の曾祖母から作品を受け継いだと主張しており、そのうちの1点は、《Luncheon on the Grass, After Manet》(1961)だった。
ケイシェルはまた、《レディース・ラウンジ》内に展示されていた他の作品も偽物であることを認めた。それらの中には、「アンティーク」の槍や、デンマーク王妃メアリーが所有していた絨毯が含まれる。
インスタレーションが作られた際にケイシェルは贋作を作成しており、その理由をMonaのブログに次のように記している。
「男性がこの空間内から排除されていると感じられるようにするには、ラウンジを豪華で華やかにする必要がありました。そのためには、世界最高峰の芸術作品が展示されていなければなりません。ピカソの作品を借りるつてはいくつかありましたが、どの作品も緑色ではありませんでした。ラウンジ内は緑色で統一しようと考えていたので」
彼女はまた、「このような事態を起こしてしまい申し訳ございませんでした」と、ピカソの遺産管理団体に対してフランス語で綴った謝罪とともに、ブログ投稿を締めくくっていた。(翻訳:編集部)
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