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デイヴィッド・ツヴィルナーがデジタル部門を縮小。ECプラットフォームの業績不振が原因か

デイヴィッド・ツヴィルナーがデジタル部門の人員約10名の解雇を発表した。同ギャラリーが2021年から運営しているECプラットフォーム「Platform」も人事再編を直前に行っており、グループ全体のデジタル部門の業績不振がうかがえる。

ニューヨーク・シティ20丁目にあるデイヴィッド・ツヴィルナー。Photo: Jason Schmidt/Courtesy of David Zwirner

デイヴィッド・ツヴィルナーは、ウェブ開発とエンジニアのチームからおよそ10人の従業員の解雇を発表。今回の人員削減の対象となったのは、オンライン販売を強化するべく2023年3月に雇用された従業員だという。

ギャラリーの広報担当者は「当社のデジタルチームを大幅に再編成しました」と語っており、今回の人事再編は、オンライン販売の強化を目標に掲げた2020年ぶりに実施された。同ギャラリーは、コロナ禍による売り上げ減少により、20%の従業員を同年7月にレイオフしている

また広報担当者は、チームの再編成は、自社のデータベースの構築が完了し、ウェブサイトが新たなプラットフォームに移行された後に行われたと語る。

従業員の3%を解雇した今回のレイオフは、小規模なギャラリーと提携しているデジタル・マーケットプレイス「Platform」の従業員の配置転換が完了した数カ月後に実施。匿名を条件にARTnews US版の取材に応じた二人の元従業員によると、2021年に創業したPlatformは、2023年秋に10人体制のチームから二人のコンテンツ責任者と、一人の常勤スタッフを解雇したという。

同社はまた、2023年12月に従業員を5人まで減らし、ニューヨーク・タイムズ紙のファッション面で特集されたことをきっかけに、ジョシュ・スミス、レイモンド・ペティボン、キャサリン・ベルナールといったツヴィルナーに所属するアーティストの彫刻作品を発表したほか、宝飾品やトートバッグなどの商品を取り扱うようになった。

ツヴィルナーがPlatformをローンチした2021年5月には、現代アーティストの作品100点を2500〜50000ドル(約37万〜750万円)の価格帯で毎月販売していた。ツヴィルナーはPlatformで売却された作品の20%を手数料として得ており、従来とは一線を画したビジネスモデルを確立した。このマーケットプレイスを創設したデイヴィッド・ツヴィルナーの息子、ルーカス・ツヴィルナーはニューヨーク・タイムズのインタビューに対し、Platfrom上に掲載されるオリジナル編集コンテンツ制作費に資金を投じ、所属アーティスト以外の新進作家にも露出の機会を提供していると語った(Platfromは、David Zwirner Digital, LLCとは別の事業体として設立されている)。

ところが、2023年5月に配布された内部文書によると、同社は毎月50点ほどの美術品を販売することを目標としていたが、それが達成されることは一度もなく、毎月の実売率は10〜20%の間で停滞しており、顧客を獲得しなければならないというプレッシャーにマネージャー陣は追われていたことが明かされた。そして、2度目の資金調達キャンペーンを実施してから1年が経ってもPlatformが描いたコンセプトを売り上げにつなげられずにいたのだ。

Platform創業時に在籍していた元従業員によれば、ツヴィルナーは当初、ルーカスをクリエイティブ・リーダーに据えてこのプラットフォームを立ち上げるために500万ドル(約7億5000万円)の資金を投じたという。また、2022年7月にはPlatformを存続させるために2回目の資金調達キャンペーンを行い、投資家からさらに500万ドルの資金を調達している。ツヴィルナーのウェブサイトによると、ルーカスは同ギャラリーのコンテンツ責任者として編集部門を監督し、Platformの業務を過去に兼任していたが、現在は同ギャラリーの販売部門で上級職に付いているようだ。

Platformの人員変更と新しい方向性について質問したところ、同社は、現在7人の従業員がおり、アーティストがデザインした商品の販売に「現在は重きを置いている」と語った。また、直近の実売率は89%に上ると語っており、前年と比べると大幅に上昇しているという。

広報担当者は、最近解雇されたギャラリーのデジタル・チームの従業員は、Platformにも属していないと発表している。(翻訳:編集部)

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