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女性シュルレアリストによる「キャットウーマン」がオークションへ。人気上昇中の作家の「最高峰」

ここ数年注目が高まっている女性シュルレアリスト、レオノーラ・キャリントンによる1951年の彫刻作品《La Grande Dame》(英語名キャットウーマン)が、11月に行われるサザビーズのモダンアートイブニングセールに出品される。

レオノーラ・キャリントン《La Grande Dame》(1951) Photo: Courtesy of Sotheby’s

サザビーズが11月のモダンアートイブニングセールに、レオノーラ・キャリントンの彫刻作品《La Grande Dame(偉大なる女性)》(1951)を出品することが明らかになった。予想落札価格は500万ドルから700万ドル(約7億5000万〜10億5000万円)とされる。

サザビーズのシニアバイスプレジデントでアメリカ地区の印象派・近代美術担当責任者、ジュリアン・ドーズは、US版ARTnewsの取材に「これはキャリントンによる彫刻作品の最高峰と言えるものです」と胸を張った。

高さ約180センチメートルの木彫作品《La Grande Dame》には、古代の民間伝承、魔術、エジプトの創造神話など、さまざまな文化を参照した絵が多色で描かれ、その顔は猫を思わせる。最近では、2022年の第59回ヴェネチア・ビエンナーレの期間中、ヴェネチアのペギー・グッゲンハイム・コレクションで開催されたシュルレアリスム展、「Surrealism and Magic: Enchanted Modernity」に出展された。ちなみに、この展覧会タイトルはキャリントンの著署名から取られている。

同展がドイツ・ポツダムのバルベリーニ美術館に巡回したときには、キャリントンの絵画作品《ダゴベールの気晴らし》(1945)とこの彫刻が並んで展示された。その《ダゴベールの気晴らし》は今年5月、やはりサザビーズのオークションで、2850万ドル(約43億円)で落札され、キャリントン作品の最高額を樹立した。

サザビーズのドーズは、《La Grande Dame》のオークションはその希少性から大きな注目を集めるだろうとしてこう説明する。

「この作品には、彫刻家としてのキャリントンの異なる側面を見ることができます。彫刻は彼女の芸術的アイデンティティにおいて重要な位置を占めていたのです」

キャリントンの彫刻はごく僅かしか残されていない。その中でこの作品は、キャリントンの手によるものとされる他の立体作品とは異なり、彼女の真作であることが認められている。ドーズはオークションに向けた期待をこう述べた。

「キャリントンの最高落札額を記録した《ダゴベールの気晴らし》に匹敵し、その勢いを維持できるようなクオリティと重要性のある作品を出品できることに本当に満足していますし、嬉しく思っています」

《La Grande Dame》の来歴にも特筆すべきものがある。この作品は、シュルレアリストのパトロンとして名高いエドワード・ジェームズが長年所有していたもので、ジェームスはキャリントンなどとも親交があった。また、キャリントン作品への需要は、シュルレアリスムの歴史における女性作家の位置付けが見直されるようになった近年、急速に拡大している。5月の高額落札もその流れに乗ったものだった。

「キャリントンへの関心と需要が高まっていましたが、それを満たすような作品が世に出ていなかった。それが5月のオークションで吹き出したのだと思います」

《La Grande Dame》には、美術館などの文化施設も入札に参加することが予想されている。ドーズは、キャリントン自身のアイデンティティとこの彫刻の双方が非常にグローバルであることを指摘し、こう付け加えた。

「キャリントンはイギリスで生まれ、メキシコで活躍したアーティスト。そしてこの作品には、エジプトやケルト、アメリカ先住民を思わせる図像が描かれ、非常に幻想的で独創的なものになっています。世界の諸地域とのつながりを感じさせるこの見事な彫刻に、数多くの文化施設の食指が動くのは不思議ではありません」(翻訳:石井佳子)

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