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タイム誌が2023年版「最も影響力のある100人」を発表。アート界からはシモーヌ・リー、ヴォルフガング・ティルマンスらが選出

タイム誌が2023年の「最も影響力のある100人」を発表した。アート界からは、シモーヌ・リーヴォルフガング・ティルマンスエル・アナツイが、注目の俳優、政治家、著名人とともに選出されている。

2022年にMoMAで開催された回顧展のオープニングに出席した、ヴォルフガング・ティルマンス。Photo: Eugene Gologursky/Getty Images For The Museum of Modern Art

リストは例年通り、「アーティスト」「イノベーター」「タイタン(重要人物)」「リーダー」「アイコン」「パイオニア」の6部門で発表された。2022年の受賞者には、今回の受賞者の影響力を称える短い文章をそれぞれ書いてもらっている。

シモーヌ・リーは、プロテニス選手のヴィーナス・ウィリアムズによる文章が添えられた。ヴィーナスは、リーの作品に初めて出会った時の体験や、彼女の作品について次のように語っている。

「彼女の作品は威厳に満ちており、芸術の枠組みを超えて人々の注目を集めるような、強いメッセージを持っていました。シモーヌは、黒人個人の経験を中心に据え、黒人女性の身体の美しさや強さ、誇りを称える彫刻で、これまでの芸術の概念を完全に覆しました」

大小さまざまな彫刻やインスタレーションで世界的に評価されているリーは、昨年、黒人女性として初めてヴェネチア・ビエンナーレに米国代表として参加。最高賞である金獅子賞を受賞した。現在はボストン現代美術館個展を開催中だ。

2022年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で大規模な個展が開催され、トロントのオンタリオ美術館に巡回し話題となっているドイツ生まれの写真家、ヴォルフガング・ティルマンスには、トニー賞候補の劇作家、ジェレミー・O・ハリスが文章を寄せた。

1990年代よりサブカルチャーの目撃者として、友人や恋人、クラブに集う人々の姿を撮り続けたティルマンスについて、ハリスは、「観客を、現実とイメージ両方の世界に連れて行くユニークな能力を持っています。ティルマンスは私たちを自身の記憶に引き入れ、そして私たちの記憶を引き出してくれるのです」と語る。

ガーナ生まれのエル・アナツイについては、ナイジェリアの美術史家チカ・オケケ・アグルが言葉を贈った。アグルは、アナツイを「現代で最もインパクトのあるアーティストの1人」と賞賛し、次のように語った。

「立体作家として、彼は素材やプロセスを実験する比類ない能力を持っています。アナツイは多様な素材を集めて何年もスタジオに置いておき、まったく新しい彫刻の形を発見するまで、何回もそれらと向き合うのです」

アナツイは、西アフリカの織物、特にガーナのアカン族とエウェ族に伝わる技術を使ったタペストリーの作品で知られている。1990年にヴェネチア・ビエンナーレに初出品して以来、西アフリカとその周辺のアートシーンで大きな存在感を示してきた。2008年には、彼のタペストリーの作品《Between Earth and Heaven》が、現代アフリカのアーティストによる立体作品として初めて、ニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されている。(翻訳:編集部)

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