オラファー・エリアソンがデザインした最高級フランスワインのラベル。込められた意図とは?
アイスランド系デンマーク人アーティストのオラファー・エリアソンが、世界最高峰のワインメーカーの一つ、シャトー・ムートン・ロスチャイルドのラベルデザインを手がけた。
シャトー・ムートン・ロスチャイルドは、これまでにも数多くのアーティストをラベルデザインに起用。サルバドール・ダリ、ジョアン・ミロ、ジョルジュ・ブラック、フランシス・べーコン、キース・へリング、ジェフ・クーンズ、ニキ・ド・サンファル、ルフィーノ・タマヨ、ロバート・ウィルソン、アンディ・ウォーホルなどが名を連ねている。
今回、2019年ヴィンテージのボトルを飾るワインラベルは「ソラー・イーリス・オブ・ムートン」と名付けられ、ボルドーにあるシャトー・ムートン・ロスチャイルドのブドウの木と太陽の軌道の関係を示している。
プレスリリースによると、エリアソンはこのラベルについて、「1年を通してシャトー・ムートン・ロスチャイルドでの日の出と日没を記録しマッピング(図化)したもの」だと語る。また、「ブドウの木の生育サイクルと深い関連性を持つ昼と夜の時刻が細かに記録され、いわば太陽がブドウ畑に残したサインとも呼べる」とも述べている。
ラベルは上下二つの部分で構成される。黄色い上半分は昼を表し、アナレンマ(地球に対する太陽の軌道を示す8の字型)が描かれている。一方、下半分の深い青色は夜の暗闇を表す。中心にはオクルス(円形の窓)があり、中のワインが見える。エリアソンは「ラベルの中央にある目のようなオクルスから姿を覗かせるワインは、金色に輝く太陽、地球、そして空を含んでいて、この土地のものでありながら同時に天空を映し出すものでもある」と語る。
シャトー・ムートン・ロスチャイルドの共同オーナーであるジュリアン・ド・ボーマルシェ・ド・ロスチャイルドは、ステートメントの中で次のように述べている。「私は長年、オラファー・エリアソンの作品に魅了されてきました。2016年にべルサイユで行われた素晴らしい展覧会は私にとって決定的な瞬間であり、『いつの日か、もし彼が望むなら、オラファー・エリアソンはシャトー・ムートン・ロスチャイルドのアーティストの一人になるだろう』と思ったんです」
今までデザインされたラベルは、見た目もメッセージ性も多岐にわたっている。近年の例として、アネット・メサジェのラベルは女性の胸の下にワイングラスを持つ手が描かれ、李禹煥(リ・ウファン)によるデザインは、深いワインレッドの点描のみでシンプルに仕上げられている。
シャトー・ムートン・ロスチャイルドは決して安い買い物ではない。現在、Wine-Searcher.comに掲載されている2019年ヴィンテージの平均価格は721ドルだ。(翻訳:平林まき)
※本記事は、米国版ARTnewsに2021年12月6日に掲載されました。元記事はこちら。