芸術はホモ・サピエンスだけのものではなかった! 最新研究でネアンデルタール人の創造的活動が明らかに
ネアンデルタール人のいくつかの遺跡から出土した7万年前までのオーカー(鉄分を多く含んだ天然の顔料土)の破片を調査したところ、絵や模様を描くために使われていたことが判明した。
クリミアとウクライナの複数のネアンデルタール人の遺跡から出土した7万年前までの赤と黄のオーカー片16点を調べた結果、絵や模様を描くために使われていたことが分かった。調査を行ったのは、フランス・ボルドー大学の考古学者、フランチェスコ・デリッコが率いる研究チームで、学術誌『Science Advances』に発表された。
ネアンデルタール人は、約40万年前から約4万年前までヨーロッパや西アジアに生息していた人類の一種(古人類)で、現生人類(ホモ・サピエンス)とは近縁種にあたる。ネアンデルタール人は約4万年前にその姿を消したが、その理由は完全には解明されていない。
古くからネアンデルタール人は、オーカーを身体や衣服をはじめ様々な表面を装飾するために使っていたと考えられてきた。しかし、ネアンデルタール人によるその他の用途については、これまで決定的な証拠がほとんど存在しなかった。
調査チームは電子顕微鏡と携帯型X線スキャナーを用い、オーカー片16点の成分と表面の加工痕を精密に調べた。中でも特に注目に値する発見がなされたのは、ミコキアン期(約13万〜3万3千年前)の黄オーカーのものだ。分析の結果、先端部分が繰り返し研磨され再利用されていたことが判明した。専門家らは、この形状は意図的に加工されたものであり、まるでクレヨンのように線や模様を描くために使われていたと考えている。つまり、ネアンデルタール人は私たち現代人と同様の方法で描画を行っていた可能性があるということになる。
そのほかにも、研磨された表面に刻線と明確な割れ目を持った黄オーカー片は描画に使用されたとみられ、別の赤オーカー片にも繰り返し研磨・削られた痕跡が確認されるなどミコキアン期のオーカー片と一致する特徴を示していた。
研究チームは論文の中で、「オーカー片の意図的な成形と再利用、刻まれた模様は、ネアンデルタール人が少なくとも一部のオーカーを創造的な活動に使っていたことを示しています」と語っている。
この調査結果について、研究に関与していないケンブリッジ大学の考古学者エマ・ポメロイはNew Scientistの取材に対して、「色の象徴的使用に関する理解に新たな一面を加えるものです。非常に興味深い発見です」と評した。
これらの発見は、ネアンデルタール人が道具を用いて描画や線刻を行っていたことを表している。それらの創造的行為は科学者の間で高度な文明性の指標とされており、今回の研究結果は、ネアンデルタール人が従来考えられていたよりもはるかに文化的で、ホモ・サピエンスと同様に創造的な実践に関わっていた可能性を示している。(翻訳:編集部)
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