米中間選挙とアート:保守派への政治献金トップ10にメガコレクター3人がランクイン
現在開票中の米中間選挙。投票日を前に、政治献金提供者のランキングが発表された。保守派の選挙活動に高額の政治献金を行った上位10人の中には、アートへの支援活動で知られる実業家が名を連ねている。
米国で政治資金の流れを追跡している無党派の非営利組織オープンシークレッツがこのほど発表した調査結果によると、中間選挙を前に共和党への政治献金を行った上位10人の中に、ヘッジファンド会社シタデル(Citadel)創業者・CEOのケン・グリフィン、IT企業オラクル創業者のラリー・エリソン、投資会社ブラックストーンのスティーブン・A・シュワルツマンがランクイン。この3人は合わせて1億3500万ドル(約198億円)を、保守派の団体や組織に寄付している。
ブルームバーグの報道によれば、2022年の中間選挙に使われる活動資金は、これまでの最高額だった18年の約30%増で93億(約1兆3000億円)を超えると推定され、過去最高額となる見通し。今回の争点は、人工妊娠中絶の権利、経済危機、移民問題などだ。
政治的影響力のあるスティーブン・A・シュワルツマン、ケン・グリフィン、ラリー・エリソンの3人は、ARTnewsトップ200コレクターズに選ばれるなど、アートの分野でも大きな存在感を持つ。
グリフィンは、21年に行われたオークションで、仮想通貨の愛好家1万7000人が結成したDAO(分散型自立組織)に競り勝って、米合衆国憲法の貴重な原本を4300万ドル(約50億円)で落札し、大きな話題を呼んだ。グリフィンは今年、これをアーカンソー州の美術館、クリスタルブリッジズ・ミュージアム・オブ・アメリカン・アートに貸し出している。
グリフィンはこのほかにも、ジャン=ミシェル・バスキア、ポール・セザンヌ、ジャクソン・ポロック、ジャスパー・ジョーンズの作品を含む豪華なアートコレクションを所有。また、15年以降、米国内の美術館やアート関連施設に2億6000万ドルあまりを寄付しており、シカゴ現代美術館にはグリフィンの名を冠する展示室が設けられている。
20年の大統領選挙でトランプ陣営に多額の寄付をしたシュワルツマンは、資産家が生前または死後に資産の半分以上を慈善活動に寄付することを誓う「ギビング・プレッジ」に署名。シュワルツマンはまた、ニューヨークの美術館フリック・コレクションの理事を務めており、同館の公式ウェブサイトによると、11月〜12月に美術館の年次基金に寄せられる一般寄付の総額と同じ額を自分も寄付することを約束している。
さらに、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュート(ニューヨーク)の展覧会「Heavenly Bodies, Fashion and the Catholic Imagination(ヘブンリーボディーズ、ファッション、カトリックの想像力)」のスポンサーとなったほか、パリ装飾美術館のファッション・ギャラリーの改修も支援している。ニューヨーク公共図書館には、美術品を所蔵するスティーブン・A・シュワルツマン館がある。
テクノロジー業界の有力者であるエリソンは、10年以来、自身のコレクションを収蔵する個人美術館の設立に向けて準備を進めている。美術館への直接的な支援活動はあまり目立たないものの、個人のコレクションを公共施設での展示のために積極的に貸し出しており、21年に米国各地で開催された巡回展では、エリソンの所有するゴッホの絵画2点が展示された。エリソン所有のアジア美術作品が、サンフランシスコの美術館で公開されたこともある。
オープンシークレッツによる保守派支援者ランキングの上位には、このほか米中西部でビジネス・配送用品会社を経営するリチャード・ユーラインの名前もある。ユーラインはシカゴのフィールド自然史博物館の大口支援者として知られるが、極右活動に資金を提供していることが明らかになっている。また、メロン銀行創業者の子孫にあたるティモシー・メロンもランクインしている。芸術関連の支援活動を行う財団としては米国最大規模のアンドリュー・W・メロン財団で、長年にわたり理事を務めていた人物だ。(翻訳:清水玲奈)
*from ARTnews