NY「富裕層新税」に波紋。ガゴシアンやツヴィルナーら、アート界大物の豪邸所有が明らかに

ニューヨーク市が公開した高級住宅所有者データベースに、アート界を代表するコレクターやギャラリストの名前が並んだ。新税導入に伴う措置だが、「プライバシー侵害」と反発する声も上がっている。

New York City Mayor Zohran Mamdani delivers remarks about the fiscal year 2027 budget in New York City Hall, New York, U.S., May 12, 2026. Photo by Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images
2026年5月12日、ニューヨーク市庁舎で2027会計年度予算について演説するニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長。Photo: Mostafa Bassim/Anadolu via Getty Images

ニューヨーク市が導入した新たな「ピエ・ア・テール税(pied-à-terre tax=主たる居住地ではない100万ドル超の高級住宅に課される追加税)」によって、大口アートコレクターたちは「ビッグアップル」を離れ、税制上の優遇措置がある他の文化都市へと移ることになるのだろうか?

いま、この疑問が議論の中心となっている。そのきっかけとなったのは、ニューヨーク市財務局(Department of Finance、DOF)が先週公開したデータベースだ。このリストには、新たな「ピエ・ア・テール税」の対象となる可能性のある著名なアート界関係者が数多く掲載されている。

Artnet Newsが最初に報じたDOFのデータベースによると、その中には、億万長者のコレクターであるスティーブン・A・コーエンレオン・ブラックレン・ブラバトニクミッチェル・レイルズに加え、アートアドバイザーのアラン・シュワルツマンや、ギャラリストのラリー・ガゴシアンデイヴィッド・ツヴィルナー、さらにペース創設者のアーネ・グリムシャーと最高経営責任者のマーク・グリムシャーなど、ブルーチップ市場を代表する人物も含まれている。

これらの人物の多くは、課税対象となる可能性のある不動産を有限責任会社(LLC)名義で保有している。例えば、ガゴシアンが所有するイースト75丁目の邸宅は「Sugar Shack LLC」名義となっており、市はその評価額を6330万ドルとしている。

ゾーラン・マムダニ市長は選挙戦で、富裕層が所有する高級セカンドハウスへの課税を通じて、市の数十億ドル規模の財政赤字解消を目指すと公約していた。これを受け、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は5月、州予算案の一環としてピエ・ア・テール税の導入を正式決定した。この措置は、物件の種類に応じて評価額100万ドル(約1億6000万円)超の住宅のうち、所有者の主たる居住地ではない不動産を対象としている。

この提案を後押しするため、マムダニ市長は億万長者のコレクター、ケネス・C・グリフィンが所有するセントラルパーク・サウスの2億3800万ドル(約389億円)のペントハウス前で撮影した動画を公開した。この物件は、新たな追加課税の下で年間約100万ドルの税負担が生じる可能性があると試算されている。

7月24日、DOFは市内約96万件の不動産を対象とする2種類の固定資産評価台帳を公表し、それぞれの所有者名、所在地、市による評価額を掲載した。同局は、このリストに掲載されたからといって、その物件が必ずしもピエ・ア・テール税の課税対象になるわけではないと強調しており、データベースは現在も精査中だとしている。また、掲載情報はいずれも公開記録であり、毎年固定資産税台帳を公表すること自体は通常の手続きであるとも説明した。ただし、今年の公表には例年にない注目が集まっている。

その注目ぶりは理解できるものだった。Artnet NewsとReal Dealが報じたように、このデータベースによって、市内各地の高級タウンハウスやコンドミニアムを所有するLLCの背後にいる個人が初めて明らかになったからだ。その結果、一部の所有者は、自身の物件が主たる居住地に該当することを証明するための法的手段を準備し始めている。

コレクターでありギャラリスト、さらにArtnet News寄稿者でもあるアダム・リンデマンも、このデータベースに名前が掲載された1人だった。市は彼が所有するアッパー・イースト・サイドの住宅を4100万ドルと評価したが、リンデマンは「私は人生を通じてニューヨーク市に税金を納めてきた」と述べている。彼は固定資産税台帳の公開を「プライバシー侵害にあたる」として批判した。

ツヴィルナーが所有するイーストビレッジの住宅もデータベースに掲載され、市による評価額は1060万ドルとされた。ツヴィルナーのギャラリーの広報担当者は同誌に対し、「デイヴィッドはニューヨーク市の居住者であり、この住所が彼の主たる居住地です」とコメントしている。

US版ARTnewsは、マムダニ市長の事務所にコメントを求めている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、7月1日に施行されたこの新たな追加課税によって、一部の高級セカンドハウス所有者は年間の固定資産税負担が数万ドル単位で増加する可能性があると報じている。

マムダニ市長は先週の声明で次のように述べた

「今年の納税日に私は『富裕層に課税する』と約束しました。そして新しいピエ・ア・テール税によって、その約束を実行に移しました。ニューヨーク市内に500万ドルを超えるセカンドハウスを所有している人は、ニューヨーク市に戻ったら郵便受けを確認してください。あなた宛ての課税通知が届いていますから」

今回の通知は、この税制の第1段階に関するもので、評価額100万ドル以上のコンドミニアムや協同組合住宅(co-op)も対象となる。税率は物件の種類や評価額に応じて0.8~6.5%となる予定だ。戸建住宅とコンドミニアムの所有者は8月21日まで、協同組合住宅所有者は8月24日までに免税申請を行うことができる。DOFによると、正式な納税通知書は11月に発送される予定だ。(翻訳:編集部)

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