約300年前の中国磁器が「謎の落下」──大英博物館の無人展示室で2点が破損

大英博物館で、約300年前に中国・景徳鎮で作られた磁器碗が展示棚から落下し、小箱とともに破損した。事故当時、展示室は無人で、棚や固定具にも異常は見られなかったという。原因の調査と修復が進む中、中国のSNSでは文化財の保護をめぐる議論が起きている。

落下により破損した、清代に中国・江西省の景徳鎮で制作された磁器の碗(収蔵品番号B629)。Photo: © The Trustees of the British Museum.

10月9日、大英博物館は、展示中の中国陶磁器2点が破損し修復を進めていることを認めた。サウスチャイナ・モーニング・ポストが伝えた。

事故が起きたのは10月4日。第95展示室にある4段の展示ケースの最上段から、磁器の碗(収蔵品番号B629)が落下し、最下段に置かれていた磁器製の小箱(同634)にぶつかって、両方が破損した。2点はいずれも、清代の康熙年間(1662〜1722)に中国・江西省の景徳鎮で制作されたものだ。

LBCによると、監視カメラの映像から、事故当時の展示室には誰もいなかったことが確認されている。棚や碗を支える固定具にも不具合の兆候は見られず、同館は引き続き落下の原因を調べている。

同館は「2点とも、すでに当館の専門修復チームに引き渡され、全面的な修復が進められています」と説明した。第95展示室は事故後に一時閉鎖されたが、展示ケース内の破片を撤去し、翌日に再開したという。

破損した碗は直径21.6センチ、高さ8センチ。染付で、女性たちが庭園で絵画を鑑賞し、弦楽器を奏で、盤上遊戯を楽しむ様子が描かれている。同館は「15世紀の明代の磁器碗を非常に精巧に模したもの」と解説している。一方、小箱は直径6.6センチ、高さ2.5センチで、浅いドーム状の蓋が付いた円形の器だ。蓋には仏手柑(指のように分かれた実を付ける柑橘)が描かれ、その周囲を桃の枝や椿が囲んでいる。

今回の事故を受け、中国のSNSでは、博物館が壊れやすい作品をどう保護すべきかをめぐって議論が起きている。ロンドンで中国語のツアーガイドを務めるパン・ジンユー(Pan Jinyu)は10月8日、SNSに次のように投稿した。

「私がより気になるのは、なぜ事故が起きたのか、作品がどのように修復されるのか、そして同様の事故を今後どう防ぐのかということです」

破損した2点は、パーシヴァル・デイヴィッド中国美術財団から寄贈されたコレクションの一部だ。3世紀から20世紀にかけて制作された約1700点で構成され、清代や元代の宮廷用陶磁器も含まれる。

アートフォーラムによると、このコレクションはイギリスの金融家パーシヴァル・デイヴィッドが1920〜30年代に収集したもの。2025年に大英博物館へ寄贈され、評価額は約10億ポンド(現在の為替で約2100億円)にのぼる。英国の博物館が受けた寄贈としては、史上最高額とされている。

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