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  • 2023.03.22

「韓国を体現する」抽象画家ユ・ヨングクの遺作を、ペース・ギャラリーとソウルのPKMが取扱い開始。アートバーゼル香港にも出品

BTS(防弾少年団)RMも敬愛する、韓国で大きな影響力を持つユ・ヨングク(劉永国)。これまで国外ではあまり紹介されてこなかったこの現代美術の大家の作品を、新たに大手ギャラリー2社が扱うことになった。

1980年代のユ・ヨングク(劉永国)。Photo: ©Yoo Youngkuk Art Foundation

今回、ユ・ヨングク(劉永国/1916 - 2002年)の遺作管理についてパートナーシップを結んだのは、世界3大ギャラリーの一つであるペースと、ソウルの大手ギャラリーPKMだ。PKMが韓国国内、ペースが国外での取扱いを担当する。

3月23日〜25日に一般開催されるアートバーゼル香港では、両ギャラリーがそれぞれ自社ブースでユの作品を出展。また、今秋には韓国国外で初の個展が、ニューヨークのチェルシー地区にあるペースの旗艦ギャラリーで開催される予定だ。

1916年に韓国慶尚北道の蔚珍(ウルチン)で生まれたユは、20世紀を代表する韓国人アーティストの1人に数えられる。1930年代、日本が朝鮮半島を統治下に置いていた時代に東京で美術の勉強を始めて以来、70年近い作家人生を送った。1938年に油彩画、1940年に写真の学位を取得し、この時期に新しい前衛芸術を目指した自由美術家協会などのアーティストとの関わりを持つようになった。

1943年に韓国に帰国後は、10年以上にわたり制作活動を停止し、漁師をしたり焼酎の蒸留所で働くなど、さまざまな仕事を渡り歩いた。再び絵を描くようになったのは1955年の朝鮮戦争終結後で、2002年に86歳で没している。

ユは、抽象的かつシンプルなフォルムで豊かな色彩表現を追求した。強い印象を与える風景のような抽象画は彩度の高い色彩で描かれ、ピンクや紫色の山に見えるもの、幾何学的な形や鋭い線がカンバスの上で振動しているように感じられるものもある。日本統治時代、第2次世界大戦、朝鮮戦争という激動の時代を生き抜いたユにとって、山は何百年にもわたり風雪に耐える不変の安定を意味した。その作風について、美術史家のガブリエル・リッターは「自然や韓国そのものを体現している」と評している。

アートバーゼル香港でペース・ギャラリーが出展するユ・ヨングクの作品《Work》(1974)。Photo: Chunho An

PKMのパク・キョンミ社長は声明でこう述べている。

「両ギャラリーの国際的なコラボレーションは、韓国初の抽象画家であるユ・ヨングクを美術史の観点から再評価し、独自の美的感覚を世界に発信するうえで大きな相乗効果を生み出すでしょう。今後、ユの作品が世界のさまざまな美術館などで、積極的に紹介されるようになると期待しています」

韓国では、正統派のアーティストとして地位が確立されているユだが、これまで国外、特にアメリカやヨーロッパではほとんど展示されてこなかった。1963年のサンパウロ・ビエンナーレ、1967年の東京ビエンナーレに出展されたほか、韓国の国立現代美術館(MMCA)、ソウル市立美術館、大邱(テグ)美術館、サムスン美術館Leeum(リウム)など、韓国の代表的な美術館に作品が所蔵されている。

2016年にMMCAが大規模な回顧展を行い、2020年にはキュレーターのローザ・マリア・ファルヴォが編集したユの研究書がリッツォーリ社から出版されるなど、近年、再評価の機運が高まっていた。

ペースは今回の発表を伝えるプレスリリースで、「アグネス・マーティンやマーク・ロスコといった抽象・ミニマリストの画家を支援してきた長い歴史と、李禹煥やイ・クニョン(Lee Kun-Yong)など韓国人アーティストを長年支持してきた姿勢を改めて示す」ものだと、他の所属アーティストを引き合いに出しながら説明している。また、2022年秋に大規模なギャラリーを開設したソウルに引き続き力を入れる方針も、改めて強調した。

ペースのCEO、マーク・グリムシャーはこう語っている。「PKMギャラリーと協力して、ユ・ヨングクの非凡な作品を世界中の観客に紹介できることを嬉しく思っています。ユは1930年代に抽象画への革新的なアプローチを確立し、韓国の近現代美術の形成に大きな影響を与えました。ペースのプログラムの一環として、ユの作品を紹介できるのは光栄なことです」(翻訳:清水玲奈)

from ARTnews

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