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  • 2023.07.21

今週末に見たいアートイベントTOP5: 90メートルの大作も!「デイヴィッド・ホックニー展」、カルト的人気を誇るチェコ・アニメの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエル「怪談」

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画–横山大観、杉山寧から現代の作家まで(ポーラ美術館)展示風景(三瀬夏之介) Photo: Ken KATO

1. ヤン・シュヴァンクマイエル「怪談」(Galerie LIBRAIRIE6 /シス書店)

シュルレアリスムの鬼才がコラージュで描く怪談の世界。日本未公開の監督映画も上映

シュールでグロテスクな世界観に熱狂的なファンも多いチェコ生まれの映画監督、ヤン・シュヴァンクマイエル。人形を使ったコマ撮り映画をはじめ、絵画やコラージュ、陶芸などと幅広い芸術活動に取り組んでいる。今年7月に新装版が刊行された、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)『怪談』(新装版)の挿画も担当した。今展では、そのコラージュによる挿し絵21点を中心に、映画『アリス』のイラストや、映画制作でもパートナーだった画家の妻、故エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの作品を展示する。会場では日本未公開の新作映画も上映し、絵画と映画の貴重な鑑賞体験ができる。

「雪おんな」や「耳無芳一のはなし」などが収録された『怪談』の挿画をシュルレアリスムの鬼才が手掛けると……怪奇な世界に、独特の不気味さがにじみ出す。監督・脚本を手掛けた新作ドキュメント映画『Kunstkamera – クンストカメラ – 』(113 分)では、そんなヤン・シュヴァンクマイエルの創作の源が垣間見える。自身が収集する民俗的な彫刻や奇妙なオブジェなどのアートコレクションを次々と映し出すこの映画が、会場の小型モニターでループ上映される。

ヤン・シュヴァンクマイエル「怪談」
会期:7月8日(土)~ 8月13日(日)
会場:LIBRAIRIE6 /シス書店(東京都渋谷区恵比寿南1-12-2 南ビル3F)
時間:12:00 ~ 19:00  (29日はイベントのため14:00〜17:00休廊、日曜と祝日は18:00まで、8月13日は17:00まで)


2. ダヴィット・フェスル「Hello Yuko」(小山登美夫ギャラリー天王洲)

Untitled 2023 Turned wood, plastic tube, tile shard, seashell, plastic ball 10.8 x 5.5 x 4.5 cm ©David Fesl, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

「身近」であり「他者」、石鹸ネットやネイルチップなどを組み合わせた造形物群

チェコ・プラハを拠点にする1995年生まれのダヴィット・フェスルの、アジア初個展。石鹸ネットやネイルチップ、植物の葉や動物の骨、ピーナッツの殻などを素材にしたコラージュ作品を発表する。手のひらに収まるようなサイズの素材を、形・質感・色などから読み取った論理に従って、注意深く組み合わせるフェスル。その作品を、日本人の身長に合わせた高さで壁面に展示し、さらに床にも設置して異なった視点を提案する。

展覧会名の「Hello Yuko」は、本展を企画したディレクター・長瀬夕子とフェスルとのコミュニケーションを指し示す。また、他者と、身近なもの・親密なものとの定まらない境界を示すものでもある。生活の中の身近な素材を、並べ、転回させ、織り交ぜるといった最小限の行為で作品を構成するが、見た瞬間には一つひとつの素材は判読できない。そして判読できた後も、素材同士が「他者」であることが強調される。作品の展開はシンプルに見えながら、さまざまな文脈を生み出していく。

ダヴィット・フェスル「Hello Yuko」
会期:7月8日(土)~ 29日(土)
会場:小山登美夫ギャラリー天王洲(東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex I 4F)
時間:11:00 ~ 18:00


3. テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ(国立新美術館)

ジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》1969年 © 2023 James Turrell. Photograph by Florian Holzherr.

ターナー、コンスタブル、リヒターなど100点が初来日

イギリスを代表する国立美術館、テートが所蔵する、18世紀から現代までの「光」を表現した約120作品が来日する。そのうち実に約100点が日本初出品となる。「光の画家」と呼ばれるイギリスのウィリアム・ターナージョン・コンスタブル、モネなどの印象派、造形学校・バウハウスの写真家たち、現代作家の草間彌生ゲルハルト・リヒターなど、顔触れも多彩だ。絵画などのほかに、彫刻やキネティック・アート、映像作品も並ぶ。中国やオーストラリアなど、4カ国を巡回してたどり着いた最終会場の日本では、エドワード・バーン=ジョーンズ、マーク・ロスコなどの12点が限定出品される。

会場は「室内の光」「光の再構成」と言ったテーマごとに、作品同士が呼応するように構成。光に魅了され、それを表現するための手法を追い求めた作家たちが競演する。ターナーの《光と色彩(ゲーテの理論)—大洪水の翌朝—創世記を書くモーセ》のほか、リヒターの《アブストラクト・ぺインティング(726)》も初来日。大型インスタレーションでは、ジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》やオラファー・エリアソン 《星くずの素粒子》が、光の空間をつくり出す。

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ
会期:7月12日(水)~ 10月2日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00 ~ 18:00 (金曜と土曜は20:00まで、入場は30分前まで)


4. デイヴィッド・ホックニー展(東京都現代美術館)

デイヴィッド・ホックニー 《スプリンクラー》  1967年 東京都現代美術館 Ⓒ David Hockney

ホックニーの現在地を知る大規模個展。iPadを駆使し、進化を続ける86歳

現代を代表するアーティストの1人で、86歳を迎えた今も精力的に活動するデイヴィッド・ホックニーロンドンの王立美術学校に入学後は早くから注目を集め、第一線で絵画や写真、舞台美術などに取り組んできた。日本では27年ぶりとなる大規模個展では、自身の代名詞でもある2人の人物を配した構図の「ダブル・ポートレート」や、ピカソのキュビスムや中国の画巻に着想した「フォト・コラージュ」の作品など代表作が集結する。「同じことを反復するのではなく新しいなにかを発見したい」と話すホックニーが、ロックダウン中にiPadで描いた新作も登場する。

今展の注目作で日本初公開の《春の到来イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート2011年》は、春の芽吹きをダイナミックに描いた、幅10メートル、高さ3.5メートルの油彩画だ。幼少期に慣れ親しんだイギリスヨークシャー東部の風景を色彩豊かに表現した。2019年からは拠点をフランス北西部に。コロナ禍で自然のうつろいを見つめた全長90メートルもの大作《ノルマンディーの12か月》は、画家の集大成でもあり、今後のさらなる進化を期待させる。

デイヴィッド・ホックニー展
会期:7月15日(土)~ 11月5日(日)
会場:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00 ~ 18:00 (7/21・28・8/4・11・18・25は21:00まで、入場は30分前まで)


5.  シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画–横山大観、杉山寧から現代の作家まで(ポーラ美術館)

展示風景(三瀬夏之介) Photo: Ken KATO

近代の名品から現代の大作まで、「革新」の過程を辿る

何をもって「日本画」というのか。主題か、それとも画材か? 度々議論されてきたそんな問いに真っ正面から向き合い、日本画の系譜を追う展覧会が開催されている。同館所蔵品と、東京・京都国立美術館など全国から集めた名品、現代作家による多数の新作で構成する、ポーラ美術館の13年ぶりとなる日本画展。日本画という概念が生まれた明治期から現代にいたるまで、革新を続けてきた歴史を網羅的に振り返る。

近代以降、西洋画との接触しながら独自の表現方法や概念を模索し続けた「日本画」。横山大観や菱田春草らが、輪郭を描かずにぼかす「朦朧(もうろう)体」の技法を編み出し、西洋の顔料や合成顔料の導入で、これまでにない鮮やかな色彩を獲得した。戦後の日本画を牽引し、「日展三山」と称された杉山寧、東山魁夷、髙山辰雄らを紹介するほか、日本画の特質を浮き彫りにするため、明治期の高橋由一や浅井忠、大正・昭和期の岸田劉生、岡田三郎助、藤田嗣治ら洋画家たちの作品もあわせて展示する。現代作家の山本太郎、深堀隆介、李禹煥蔡國強杉本博司などの作品も並ぶ。

7月22日(土)と23日(日)、今展の出品作家で、塩を用いたインスタレーションを制作する山本基が滞在制作を公開する。

シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画–横山大観、杉山寧から現代の作家まで
会期:7月15日(土)~ 12月3日(日)
会場:ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
時間:9:00 ~ 17:00 (入場は30分前まで)

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