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中国の億万長者、リウ・イーチェンが約218億円相当の美術品を売却。私設美術館の財政難が理由か

中国・上海をはじめ国内に3つの私設美術館を構える中国のアートコレクターで投資家のリウ・イーチェンが、モディリアーニマグリットデイヴィッド・ホックニー草間彌生などの作品をサザビーズに出品することがわかった。

2014年5月に龍美術館を視察したフランス外相(当時)ローラン・ファビウス(写真右)らに説明する同美術館のオーナーで中国の億万長者、リウ・イーチェン(中)。Photo: AFP via Getty Images

上海の私設美術館、龍美術館(Long Museum)の創設者で投資家、アートコレクターである劉益謙(リウ・イーチェン)とその妻、王薇(ワン・ウェイ)は、サザビーズを通じて、推定1億5000万ドル(約218億円)相当の美術品を売却する予定だ。オークション開催日の具体的な日程はまだ明かされていない。

龍美術館は、2012年にオープン後、2014年に同じく上海・浦東地区に、そして2016年には重慶にも拠点を構え、中国、特に上海アートシーンの主要プレーヤーとしての地位を確立している。また、リウとワン夫妻は、2015年に行われたオークションでアメデオ・モディリアーニの《Nu couché(横たわる裸婦)》(1919年)と《Paulette Jourdain》(1919年)を、それぞれ1億7,040万ドル(現在の為替で約248億円)、4,280万ドル(同・約62億円)で落札したことで、世界の美術界にその名を知られることとなった。

サザビーズによると、今回のオークションには、リウとワンが所有するコレクションから50〜60点の作品が出品される予定。そこには、アマデオ・モディリアーニ、趙無極(ザオ・ウーキー)白髪一雄、藤田嗣治、ルネ・マグリットデイヴィッド・ホックニー、マシュー・ウォン、ダナ・シュッツ、ニコラ・パーティー、張茘英(ジョージェット・チェン)、草間彌生などの作品が含まれる。また、ジェニー・サヴィルケリー・ジェームズ・マーシャルの作品も、売却を検討中とのこと。

2016年6月、同美術館はサザビーズのオークションでジェニー・サヴィルの絵画《Shift》(1996-97年)を当時史上最高額となる910万ドル(現在の為替で約13億円)で落札した。同年、龍美術館はニューヨークのクリスティーズで、ケリー・ジェームズ・マーシャルの1992年の《Plunge》も210万ドル(同・約3億円)で購入し、同作家による作品の中では最高額(当時)を打ち立てた。

これほどの大物かつアクティブなコレクターが所蔵作品をオークションで売却するのは珍しい。夫妻はクリスティーズ、サザビーズ、フィリップスの幹部や専門家に接触し、保有する現代美術作品の売却案を売り込んだというが、売却の理由はまだわかっていない。

US版ARTnewsは、サザビーズに、今回の売却が財政難と関連しているかどうか問い合わせたが、現時点で回答は得られていない。また、龍美術館の担当者もコメントしていない。

投資家としても知られるリウは、製薬、不動産、金融サービスの持株会社であるサンライン・グループから巨利を得ており、現在の資産総額は推定50億ドル(約7300億円)。アートコレクションを開始したのは1990年代半ばで、以来、夫妻はアジアで最も有名なコレクターとして名声を築いた。

また二人が龍美術館をオープンしたのを機に、中国では私立美術館ブームが起こった。これまで龍美術館では、オラファー・エリアソンジェームズ・タレルといった現代アーティストらの大規模回顧展を開催している。

サザビーズによると、今回の売却益は、今後も開館を続ける予定の同美術館での取り組みや作品購入に充てられるという。(翻訳:編集部)

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