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ブライアン・イーノら文化人1000人以上が反対を表明。パレスチナ系のイベント中止は「文化芸術に対する最も憂慮すべき検閲と抑圧」

ブリストルの国際現代芸術センター、アルノルフィーニが、パレスチナ映画祭の一環で開催される予定だった3つのイベントを中止したことに対して、1000人以上の文化人が、同施設による「パレスチナ文化の検閲」を非難する公開書簡に署名した。

ブリストルのアートセンター、アルノルフィーニ。2013年撮影。Photo: by Matt Cardy/Getty Images

公開書簡に署名したのは、ミュージシャンのブライアン・イーノ、マッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャをはじめ、ベン・リヴァース、アドハム・ファラマウィ、タイ・シャニなど錚々たる面々だ。

事の発端は2023年11月、ブリストルの国際現代芸術センター、アルノルフィーニが3つのイベント中止を発表したこと。予定されていた3つとは、アルノルフィーニで開催予定だったヨルダン系パレスチナ人のダリン・J・サラム監督による、ナクバ(1948年のパレスチナ戦争中と戦争後に数十万人のパレスチナ人が故郷を追われた事件)を題材にした映画『Farha』(2021)の上映と、本作の上映後に予定されていたパレスチナ人作家で医師のガーダ・カルミとのディスカッション、そして、ラッパーで活動家のロウキーによる詩の朗読会だ。うち、中止となった『Farha』の上映会は芸術慈善団体ウォーターシェッドで、詩のイベントはデパート兼アートハブであるスパークス・ブリストルに場所を移し、改めて開催されるという。

今回の中止についてアルノルフィーニに公的な説明を求める公開書簡が11月20日に出されたが、そこには2300人以上の署名が集まった。同施設は翌日、声明を通じて中止理由を「芸術の慈善団体として、政治的活動と解釈されるような活動を推進することは禁じられている」と発表。しかし、この声明がネット上に公開されるやいなや、同施設が過去にウクライナの災害救済のための募金活動など、数々の政治的イベントを行っていたという批判が相次いだ。

今回出された同施設による「パレスチナ文化の検閲」を非難する公開書簡も、「アルノルフィーニが映画祭を主催した過去のすべての年において、政治活動と解釈されるかどうかは深刻な懸念事項ではありませんでした。1961年の開館以来、同施設が主催してきた展覧会や公開プログラムにおいても、それは問題とされてきませんでした。脱植民地化やブラック・ライブス・マターフェミニズムやジェンダー解放、難民や亡命希望者の権利に関する重要なイベントはすべて、会場の『慈善目的』から外れることがないと判断され、開催されてきたのです」と批判している。

公開書簡の署名者たちは、最近、停戦支持感情やイスラエル政府への批判に関連した展覧会やイベントの、公的機関によるキャンセルが相次いでいることを挙げ、これらは「芸術部門における検閲と抑圧の憂慮すべきパターンの中でも、特に懸念すべきもの」であると警告する。10月にはユダヤ系南アフリカ人アーティストのキャンディス・ブライツが共催した、反ユダヤ主義と人種差別に関する会議が、主催者であるドイツ政府系機関から「この議論を建設的に主導し、司会する立場ではない」と中止された。また同月、パレスチナ人アーティストのエミリー・ジャシールも、ベルリンで予定していた講演が打ち切られている

署名者たちはこう続ける。

「アルノルフィーニの管理者たちが、パレスチナを例外とすることなく表現の自由を一貫して守ることを公に約束し、ブリストルのアート・コミュニティと真摯に関わり、自分たちが引き起こした被害を是正するまで、私たちは不本意ながら同施設との協力を拒否せざるを得ず、同施設のいかなるイベントにも参加しません」(翻訳:編集部)

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