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  • 2024.02.14

バンクシー作品を含む膨大な壁画をデータベース化。イギリスで進むパブリックアート保存プロジェクト

イギリス全土の約5000点にのぼる壁画が、無償で利用できる公開データベースに写真付きで記録されることになった。美術教育慈善団体のArt UKによる3年計画の一環として行われる。

Art UKの壁画データベースに既に登録済みのバンクシー作品《Escaping Convict at Reading Gaol》(2021)。Photo: BEN STANSALL/AFP via Getty Images

2月6日にArt UKが発表したところによると、ボランティアの研究者や写真家によってデジタル保存が進められる壁画には、絵画的な作品のほか、コンクリートやレンガ、木、石、タイルなどの素材を使った彫刻的なものも多数含まれる。また、新たに記録される中には何点かのバンクシー作品もあることをアートニュースペーパーが報じている。

Art UKのデータベースには、すでにバンクシーの《Escaping Convict at Reading Gaol》が保存されている。これはバークシャー州レディングの旧刑務所の壁にあるもので、囚人がタイプライターから打ち出された紙のように見えるものを命綱にして脱獄する様子が描かれている。この刑務所には、19世紀のイギリスを代表する詩人で作家のオスカー・ワイルドが、1895年から2年間、当時犯罪とされた同性愛行為のために投獄されていた。

6日の発表で、Art UKはこう説明している。

「ビルや住宅団地が再開発で取り壊され、多くの壁画が失われつつあります。私たちのプロジェクトは、壁画が今後撤去されたり、傷つけられたり、環境被害を受けたりする可能性に備え、現在の姿を記録しておくものです」

注目度の高いバンクシーの壁画は、破損や撤去の際に報道されることが多い。たとえば、6メートル近いカモメを描いたサフォーク州の壁画やケント州・マーゲートの《Valentine’s Day Mascara》、やはりケント州で昨年3月に取り壊された築500年の農家の壁にあった《Morning is Broken》などだ。

Art UKのプロジェクトでは、北アイルランドにある相当数の壁画もデジタル化して記録する予定。しかしこの地では、カトリック系住民とプロテスタント系住民の間で数十年にわたる激しい紛争が続いたため、記録には「特別な配慮」が必要だという。

さらに、2026年12月まで続く取り組みには、アーティストによるワークショップや視覚障害者のための音声ガイド、壁画の見学コース設定、教師のための学習素材など多様なプログラムが含まれている。

同プロジェクトには、教育映画を制作するカルチャーストリートと、視覚障害者の芸術鑑賞における障壁解消に取り組む芸術慈善団体ヴォーカルアイがパートナーとして参加。また、ナショナル・ロッタリー・ヘリテージ・ファンド、ピルグリム・トラスト、ヒストリック・イングランドから資金が提供される。(翻訳:石井佳子)

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