ポンペイの大豪邸「秘儀荘」から「待合用ベンチ」を発掘! 有力者が貧者を援助する慣習が明らかに

ポンペイで最も人気のある大豪邸「秘儀荘」での最新調査で、館の入り口に待合のベンチが置かれていたことが分かった。これは、当時の富める者が貧しい者に援助や施しをする習わしを知る上で、貴重な発見となる。

ベンチが見つかった「秘儀荘」の入り口部分。Photo: Facebook/Parco Archeologico

ポンペイ遺跡の北西にある有名な大豪邸「秘儀荘」の最新調査で、建物の入り口に待合用のベンチが置かれていたことが分かったとArcheonewsが伝えた。

「秘儀荘」はオリーブオイルで富を築いた人物の別荘で、ディオニュソスの秘儀を描いたとされるすばらしい壁画が見つかったことが名前の由来となっている。もともとは小さな建物だったが増改築を重ね、90部屋とワイナリーまで持つ大豪邸になった。

別荘の玄関で見つかったベンチは、防水性のあるローマのコンクリートの一種である「コッチョペスト」で作られていた。古代ローマでは、富豪たちはサルタティオと呼ばれる慣習で、朝にクリエンテス(被保護民)と呼ばれる社会的地位の低い人々やホームレス、旅人に援助や施しを与えていた。金銭の貸し付けや日々の食料を与えられたクリエンテスは、その代わりに、庇護者に忠誠心と選挙時の政治的支援を提供した。

「秘儀荘」の入り口で見つかったベンチ。Photo: Facebook/Parco Archeologico
ベンチに書かれた落書き。Photo: Facebook/Parco Archeologico

だが、ポンペイ考古学公園のディレクターであるガブリエル・ツヒトリーゲルは、「富豪の施しは気まぐれで、外で待つ人々はその日に面会してもらえるかどうかも分からないことがありました」と説明する。何時間も待たされたことがあったのだろう。ベンチには、暇つぶしに鋭い物体や木炭で書かれたと考えられる名前や日付らしきものを確認することが出来る。

このようなベンチは秘儀荘に特有のものではなく、ほかのポンペイの邸宅でも見つかっている。ベンチに座る人数が人気のバロメーターであり、混雑するほどその邸宅の持ち主が影響力があると認識されていた。

今回の調査は、秘儀荘の敷地に建っていた違法建築物を取り壊したことにより可能となった。現在もまだ継続中の発掘調査は、荘のまだ埋もれている区域、特に使用人居住区の探査を完了することを目指しており、ポンペイで最も豪華な邸宅での日常生活や社会的力学、管理についての新たな洞察が得られることが期待されている。

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