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美術館とサステナビリティ──ドイツの新美術館の建設工事にストップの声

  • 2022年12月9日
  • INTERNATIONAL

Text: Angelica Villa

ベルリンで進行中の近代美術館設立計画。その長期にわたる建築プロジェクトで発生する環境負荷について、建築や環境保全の専門家たちが警鐘を鳴らしている。

ベルリンの20世紀美術館、ファサードの完成予想図。Photo: Courtesy Herzog & de Meuron

ベルリンの新しい文化施設、20世紀美術館(The Modern of the 20th Century)の設計を行ったのは、世界的建築家ユニット、スイスのヘルツォーク&ド・ムーロンだ。

建設工事は2019年に始まったが、都市部での大規模な建築プロジェクトに対する評価が厳しくなる中、設計効率や工期の遅れに対し、建築や環境保全分野の専門家から批判の声が上がっている。同美術館の開館は、当初21年に予定されていた。

英『ガーディアン』紙が11月27日に報じたところによると、環境への悪影響を招きかねない設計上の問題があるとして、先月から批評家たちが建設中止を求めているという。

建設反対派は、建築資材から内部構造に至るまで、このプロジェクトはさまざまな面で持続可能性に欠けると指摘している。専門家が特に懸念点として挙げているのは、CO2排出量の多いコンクリートの使用や、透明な内部構造によって温度・湿度調節を行う換気システムのエネルギー消費量が増すことだ。

環境保全学者のステファン・サイモンは『ガーディアン』紙への声明で、このプロジェクトはEUが目標としているカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と大気中から吸収される二酸化炭素が等しい量であり、全体としてゼロとなっている状態)にそぐわないものだと述べている。

11月にエジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)では、途上国が気候変動で受けた被害や経済損失を富裕国が補償する歴史的な合意が締結されたものの、化石燃料対策には大きな進展が見られなかった。一方で、ジャスト・ストップ・オイルなどの環境活動団体がヨーロッパの美術館で繰り広げている抗議行動はエスカレートしつつある。

20世紀美術館は、ベルリンの新ナショナルギャラリーの拡張プロジェクトとして計画されたもの。ゲルハルト・リヒターヨーゼフ・ボイスエルンスト・ルートヴィッヒ・キルヒナーといった20世紀を代表するドイツのアーティストによる作品の大規模なコレクションを収蔵、展示するスペースの建設プランをドイツ政府が発表し、2019年に着工した。

同美術館は、ドイツの首都ベルリンの文化セクターに新たな歴史を刻むものとして、これまで抜け落ちていた近代美術に触れられる施設になることが期待されている。しかし、現時点で建設費は4億5000万ユーロ(約644億円)と見込まれ、当初予算の1億7900万ユーロ(約256億円)の倍以上に膨れ上がっている。

高まる批判を受け、ドイツ政府は美術館のエネルギー効率問題に対処するために年間予算から1000万ユーロ(約14億円)の追加支出を決めた。また、ドイツのクラウディア・ロート文化相は、美術館の設計見直しを求めている。1月に就任したロートは、アート関連施設における持続可能性の問題に取り組むことを公約に掲げていた。(翻訳:平林まき)

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