古代ローマ皇帝の霊廟を模した? 巨大な商業施設を備えた遺構がフランスで出土
- TEXT BY FRANCESCA ATON
ローマ皇帝アウグストゥスの霊廟を模した建造物が、フランス・リヨン近郊で姿を現した。周囲からは巨大商業施設の跡や当時の職人道具も出土し、古代ローマ時代の地域経済をうかがわせる貴重な手がかりとなっている。
フランス・リヨン近郊のサン=ロマン=アン=ガルで、ローマ市内のマルス広場にあるアウグストゥス廟をモデルにした霊廟が考古学者によって発見された。
西暦50年頃、ローヌ川沿いに建設されたこの霊廟の内部は直径15メートル以上で、天井の高さは6メートルほどだと考えられている。その大きさから、当時、リヨンから南に約30キロメートル離れたヴィエンヌからも目視できていた可能性がある。フランスでこうした霊廟はこれまで18基発見されているが、今回見つかった遺構ほど保存状態が良いものは初めてだという。今回の発見について、サン=ロマン=アン=ガル考古学博物館の研究統括責任者、ジュリア・チウッチは考古学メディア『Arkeonews』に次のように語っている。
「この霊廟に祀られていた人物は、死後も人々の記憶に強く残っていた人物だと考えられます。皇帝の霊廟を模して建てられたことは、生前の政治的権力や影響力の大きさを物語っています」
この霊廟は古代ガリア地方におけるローマ時代の状況を知る貴重な手がかりを提供するだけでなく、ローマ本国とガリア地方との結びつきを示す証拠ともなっている。今回発見された霊廟からは、1〜2世紀に作られたとされる工房3軒の遺構も見つかった。これらは火災によって焼き尽くされたが、建築の基礎や当時の職人が使っていた道具は残っていた。発見された工房のうち2軒は、羊毛の洗浄や仕上げ作業を行う漂白業者が働いていたとみられ、3軒目から発見された窯は、ガラス製造、あるいは調理に使われていた可能性がある。
1980年代から発掘調査が続けられてきたこの遺跡には、当時は少なくとも8つの店が並ぶ大規模商業施設があったとみられ、地元の職人や労働者たちで賑わっていたことがうかがえる。フランシュ・コンテ大学でローマ考古学を研究するベンジャミン・クレマンは『Arkeonews』にこう語っている。
「保存状態のよいさまざまな遺物が発見されたことで、当時の商いの様子の理解が深まることでしょう。この時代の長距離貿易に関する理解は進んでいますが、地域で行われた日常的な経済活動を示すものがこれほどいい状態で発見されることはそうありません」
この遺跡の発掘調査は、エクス・マルセイユ大学、フランシュ・コンテ大学、フランス国立科学研究センター(CNRS)が共同で実施しており、2027年まで継続される予定だ。(翻訳:編集部)

画像解析技術でポンペイの「未記録の落書き」79点を新発見──愛の告白や戦闘シーンも|高度な画像技術を用いたフランスとカナダの研究チームの調査により、ポンペイの壁から79点の落書きが新たに発見された。グラディエーターの戦闘場面や愛の告白が、2000年前の人々の暮らしをいまに伝えている。【続きを読む】
Photo: Facebook/@Pompeii - Parco Archeologico

新たに確認された落書きの中でも特に注目されているポンペイの回廊から読み取られたグラディエーターの図像。Photo: Facebook/@Pompeii - Parco Archeologico

ポンペイ「青の間」顔料代は、ローマ兵年収の最大9割!? 最新調査結果が発表|2024年にポンペイで発見された「青の間」の最新調査により、壁を覆う顔料の使用量と価値が明らかになった。その費用はローマ兵の年収の最大約9割に相当するとされ、当時の富裕層による豪奢な装飾の実態が浮かび上がった。【続きを読む】
Photo: Facebook/Archaeological Park of Pompeii

ポンペイ考古学公園で2024年に発見された「青の間」。Photo: Facebook/Archaeological Park of Pompeii
ポンペイ犠牲者の最後の瞬間をAIが可視化──すり鉢を手に逃げる男性の映像など、公開も視野に|79年のヴェスヴィオ山噴火により火山灰に埋もれた古代都市ポンペイ。2024年の発掘調査で出土した男性の遺骨や遺留品などのデータをもとに、AI技術を用いて犠牲者の行動や最期の状況を映像として可視化する試みが進んでいる。【続きを読む】Photo: Pompeii Archological Park.

2024年の発掘調査でみつかった遺骨。頭部には大きなすり鉢がある。Photo: Instagram/pompeii_parco_archeologico

遺骨とともに見つかったオイルランプ。Photo: Instagram/pompeii_parco_archeologico

ポンペイの家族を襲った悲劇が明らかに。ドアをベッドで封鎖し最期まで抵抗を試みる|考古学者たちがポンペイ遺跡にある「ヘレとフリクソスの家」を調査したところ、子ども1人を含む4人の遺骨が見つかった。調査を進めたところ、突然の災害から最期の瞬間まで生き延びようとした家族の物語が明らかになった。【続きを読む】Photo: Courtesy Pompeii Archaeological Park

「ヘレとフリクソスの家」の食堂。Photo: Facebook/Pompeii Archaeological Park

「ヘレとフリクソスの家」の食堂。Photo: Facebook/Pompeii Archaeological Park

「ヘレとフリクソスの家」の室内。Photo: Facebook/Pompeii Archaeological Park

「ヘレとフリクソスの家」の寝室で見つかった木製ベッドの石膏型。Photo: Facebook/Pompeii Archaeological Park

CTスキャンでポンペイ「逃亡者の庭」の犠牲者の職業が判明──携えていたのは「医療箱」|西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火の惨状を今に伝えるポンペイの遺跡「逃亡者の庭」。そこに残された14人の犠牲者のうち、うずくまった男性の職業が最新研究によって明らかになった。【続きを読む】Photo: Ivan Romano/Getty Images

「逃亡者の庭」の石膏像から発見された遺物。Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

ポンペイにある「逃亡者の庭」のガラスケースに収められた犠牲者の石膏像。Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

ポンペイ近郊「ポッパエアの別荘」で鮮やかなフレスコ画を発見。孔雀や仮面の精細な描写が姿を現す|ポンペイに近いトッレ・アヌンツィアータで発掘が進む遺跡で、ポッパエア・サビナの別荘からポンペイ第2様式のフレスコ画が新たに見つかった。ポッパエアは、古代ローマ帝国第5代皇帝・ネロの2番目の妻。【続きを読む】
ポッパエアの別荘で発見された孔雀のフレスコ画(部分)。Courtesy of the Archaeological Park of Pompeii
古代都市ポンペイはどのように消え、いつ発見されたのか。「時が止まった」遺跡の謎を解く|ヴェスヴィオ火山の火砕流に飲み込まれ、一瞬にして灰の中に消えたポンペイ。古代の時間が閉じ込められたこの遺跡は、今も人々の好奇心を刺激してやまない。近年も次々と新事実が明らかになるポンペイの基礎知識をまとめた。【続きを読む】Photo: LightRocket via Getty Image
ポンペイ遺跡の一区画「貞淑な恋人たちの島」に現存するフレスコ画が、新たな発見と発掘作業を経て一般に初公開された。LightRocket via Getty Images
ポンペイ遺跡にある古代ローマの円形劇場。KONTROLAB/LightRocket via Getty
噴火後も300年間人々が暮らしていた? ポンペイで通説を覆す新発見|ポンペイは、西暦79年8月25日のヴェスヴィオ山の噴火により灰に埋もれ、18世紀に再発見されるまで、人々が住むことはなかったとされてきた。だがポンペイ考古学公園が行った最新の発掘調査により、生き残った人たちが5世紀まで生活していたことが分かった。【続きを読む】
Photo: Getty images
ポンペイの犠牲者は、なぜ真夏に毛織物を着ていたのか──「死の文化」研究チームの最新調査が示す謎|西暦79年8月25日に起きたとされるヴェスヴィオ山の噴火。スペインの研究チームによる最新調査で、ポンペイの犠牲者たちは、真夏には不釣り合いとも思える毛織物を身にまとっていた事実が浮かび上がった。【続きを読む】
Photo: University of Valencia
スペイン・バレンシア大学の研究チームによるポンペイ犠牲者の調査風景。Photo: University of Valencia
ポンペイに12メートルの塔があった!? 最新デジタル調査で「失われた街」の真実の姿が明らかに|ポンペイ考古学公園は、新たなデジタル研究によって、有名な邸宅「Casa del Tiaso(ティアソスの家)」が12メートルにおよぶ塔を備えた多層建築物であった可能性が高いことが分かったと発表した。【続きを読む】
ティアソスの家の3Dデジタルモデル。Photo: Courtesy Pompeii Reset

ティアソスの家の3Dデジタルモデル。Photo: Facebook/Parco Archeologico

ティアソスの家のデジタル復元図。Photo: Facebook/Parco Archeologico
ポンペイの食堂跡からエジプト由来の陶器を発見。古代の文化交流を明かす重要な手がかりに|ポンペイの食堂跡から、約2000年前に作られた陶器が発見された。エジプト・アレクサンドリアで作られたとされるこの器が庶民が利用する食堂で見つかったことで、当時の文化交流の実態が浮かび上がる。【続きを読む】
Photo: Courtesy Archeological Park of Pompeii

ポンペイで1世紀ぶりに「デュオニソスの秘儀」の絵を発見|古代ローマの都市ポンペイの遺跡で、宴会場として使用されていた部屋の3つの壁面にまたがる巨大なフレスコ画が発見された。「デュオニソスの秘儀」を描いたと考えられ、西暦79年に発生したヴェスヴィオ火山噴火の100年以上前のものと推測されている。【続きを読む】Photo: Courtesy of the Pompeii Archaeological Park

古代ローマ以前の巨大な墓地を北イタリアで発見|イタリアの山岳地帯にあるトレントのサンタ・クローチェで、200基の墓がある大規模な埋葬地が発掘された。発見された副葬品から、埋葬地を造った人々が当時のイタリア半島における他の集団から文化的な影響を受けていたか、交流があったとをみられる。【続きを読む】Photo: Courtesy of the Press Office of the Provincial Council of Trento

炭化した巻物に「愚か」や「生命」などの文字が。AIによる古代文書の開封に進展|X線画像とAI技術を用い、炭化した古代ローマ文書を解読する試みが新たな進展を見せた。ヘルクラネウムの巻物と呼ばれる文書の「バーチャル開封」と判読に取り組んでいるのは、ヴェスヴィオ・チャレンジの参加者だ。【続きを読む】Photo: Courtesy the Vesuvius Challenge
イタリアのナポリ国立図書館が所蔵するヘルクラネウム・パピルス(2019年撮影)。Photo: Antonio Masiello/Getty Images
火山噴火の悲惨さを物語る足跡をポンペイ近くの工事現場で発見|イタリア・カンパニア州でメタンガス用パイプラインの改修工事を行っていた際に、ヴェスヴィオ火山噴火の悲惨さが伺える人の足跡や、古代末期に作られたとされる墓跡が発見された。これらの遺跡は、青銅器時代から古代末期までさかのぼるという。【続きを読む】Photo: Soprintendenza Archeologia Belle Arti e Paesaggio di Salerno e Avellino

ポンペイ最高傑作「アレクサンドロス大王のモザイク画」で新発見!|ポンペイ遺跡の中でも最高傑作と言われる、アレクサンドロス大王のモザイク画。同作の約200万個のタイルはどこから来たのか、新しい研究で明らかになった。【続きを読む】Photo: Wikimedia Commons

アレクサンドロス大王のモザイク画(部分)。Photo: Wikimedia Commons
ポンペイで有力政治家が所有した温浴施設を発見!|ポンペイ当局は豪華な温浴施設跡が発見されたとポ発表した。場所は、富裕層が住んでいた地区であるレギオ9区のノラ街道沿いの住宅で、有力政治家であったアウルス・ルスティウス・ウェルスが所有していた可能性があるという。【続きを読む】Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

ポンペイ遺跡公園で見つかった浴場跡。Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico

Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
Photo: Facebook/Pompeii - Parco Archeologico
from ARTnews