アートは社会を動かせたのか──気候アクションと反戦デモが相次いだ1年を振り返る【2025年アートニュースまとめ】
2025年も気候変動対策やパレスチナ・イスラエル戦争の停戦を求める抗議活動が相次いだ。なかでも美術施設やアートを通じて行われた活動を、10本のニュースで振り返る。
ゴッホ作品にスープをぶちまけた活動団体が解散を発表。「結成当初の目的は達成された」?

美術館に展示されている作品にスープをかけたり、身体の一部を施設の壁に貼り付けるなど、過激な抗議活動を行ってきたイギリスの環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル(JSO)」が4月26日に解散した。活動停止の理由として、JSOが訴えてきた石油・ガス採掘プロジェクトの新規承認の阻止という結成当初の目的が達成されたことを挙げており、イギリス国内では、これを禁止する法律が3月初旬に採択されている。
海上油田を深紅に染める──アニッシュ・カプーア×環境団体が温暖化への抗議作品を発表

環境保護団体グリーンピースの活動家たちが、イギリス・ノーフォーク沖にある石油・ガス掘削装置に12×8メートルのキャンバスを設置し、深紅色に染め上げた。《BUTCHERED(無惨に破壊された)》と題されたこの作品は、グリーンピースとアニッシュ・カプーアが共同企画したもので、おそらく稼働中の採掘装置で展示される初のアート作品だ。
ヴェネチアの運河が蛍光グリーンに──グレタ・トゥーンベリらがCOP30の「脱化石燃料」停滞に抗議

ヴェネチアの大運河が、環境活動家たちの手によって鮮やかな緑色に染まった。スウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリと、環境運動団体「エクステンション・レベリオン(絶滅への抵抗)」による抗議行動で、脱化石燃料で世界各国の足並みが揃わないことに不服を唱えている。
活動家がサグラダ・ファミリアに塗料を噴射。気候危機に対する政府の対応を糾弾

8月31日、バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂の柱に、環境活動家が「気候正義を」と叫びながら赤と黒の粉末塗料を吹き付けた。抗議行動を実施したのは、スペインの環境活動団体「フツロ・ベヘタル(植物の未来)」。同団体は、この夏に発生した記録的な山火事に対するスペイン政府の対応が不十分だったと訴えている。活動家たちは逮捕後に罰金を支払い釈放された。
コロンブスのアメリカ大陸発見を称えた絵画に赤い塗料。環境活動団体が「先住民搾取」に抗議

10月12日、フツロ・ベヘタルに所属する活動家がコロンブスのアメリカ大陸発見を記念し描かれた絵画に塗料を投げつける抗議行動を行った。活動家の団体は、現在も続く先住民の土地や天然資源の搾取に抗議している。
メキシコのBDS活動家がイスラエル首相の蝋人形を破壊。「虐殺者の像を撤去しない蝋人形館を非難」

1月7日、メキシコシティの蝋人形館に展示されていたイスラエル首相、ベンヤミン・ネタニヤフの人形に赤い塗料がかけられ、金槌で顔の部分が破壊された。この動画には、顔を布で覆った活動家がネタニヤフの蝋人形の足下にパレスチナの国旗を置き、蝋人形の頭に赤い塗料をかけ、金槌で何度もその顔面を殴打する様子が映されている。
「創造性に犠牲は不要」──パレスチナへの連帯を示す展示の中止をめぐりホイットニー美術館でデモ

パレスチナに連帯を示すパフォーマンスが中止されたことを受け、文化・美術関係者がニューヨークのホイットニー美術館に集結し、抗議の声を上げた。5月23日に実施された抗議活動では抗議では、参加者たちによって「Creativity Does Not Have to Rely on Death(犠牲の上に創造性を築く必要はない)」と書かれた横断幕がパレスチナ国旗とともに、同館の中2階から広げられた。
キャリア失墜、市場価値の暴落──ナン・ゴールディンとパレスチナ人活動家が語る言論弾圧の実態

パレスチナ支持により、多くのアーティストが多方面からの反発や報復を受けている。ナン・ゴールディンもその一人だ。彼女とパレスチナ人活動家マフムード・ハリルが、『Dazed』誌に掲載された対談の中で言論弾圧の実態について語った。
ゴリラのマスクを被ったアート集団「ゲリラ・ガールズ」がクイズと皮肉で差別と闘った40年を振り返る

アート界のジェンダーギャップに異議を唱え、40年にわたり活動を続けているアーティスト集団「ゲリラ・ガールズ」。時に痛烈に、時にウィットを交えてメッセージを伝えるその手法を改めて振り返り、彼女たちの運動の背景とその主張がどう拡大していったかをまとめた。
プッシー・ライオット5人に最大13年の懲役刑。「意見を述べただけで重すぎる罰」と反論

ロシアの反体制パフォーマンス集団プッシー・ライオットのメンバー5人が、モスクワの裁判所によって欠席裁判で8〜13年の実刑判決を言い渡された。2022年にYouTubeで公開した反戦動画が「虚偽情報の流布」にあたるとして訴追されていた。