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ドクメンタ16の芸術監督を担うのは誰? 2027年の開催に向けて選考委員会が発足

5年に1度、ドイツのカッセルで開催される世界最大級の芸術祭、ドクメンタ。次回の開催に向け、次期芸術監督の選考委員会が発足した。

ドクメンタ15の入場に並ぶ人々。Photo: Swen Pfortner/DPA/Picture Aliance Via Getty Images

アーティストとリーダーに反ユダヤ主義の疑義が幾度もかけられ、論争に発展した2022年のドクメンタ15。この騒動を受け、ドクメンタは今後の開催に大きな変更を迫られる大規模な報告書を発表した。次期ドクメンタの資金調達を心配する声が上がるなか、2027年の芸術監督を決める選考委員会が発足。委員6人のうち半数が、アジアまたはラテンアメリカに拠点を置いており、22年から引き続き「グローバルサウス」に焦点を当てることが決定している。

委員会の主なメンバーは、Bracha L. Ettinger、Gong Yan、Ranjit Hoskoté、Simon Njami、Kathrin Rhomberg、Maria Inés Rodríguez。

Ettingerは、イスラエルのテルアビブとパリを拠点に活動するアーティストで、フェミニズムや精神分析を扱った作品で知られている。Gongは、上海で最も重要な現代アートスペースであるPower Station of Artのディレクターであり、アーティストだ。 Hoskotéはインド・ムンバイ在住の作家・批評家で、過去には、世界的に高く評価されたナイジェリアのキュレーターで美術史家の故Okwui Enwezorと企画した2008年の光州ビエンナーレ(韓国)など、キュレーターとしても実績がある。また、パリ在住のNjamiも、過去にEnwezorと仕事をしたことのあるキュレーターで、アフリカの現代美術に関する先駆的な雑誌『Revue Noire』の創刊者の1人としても知られている。

Rhombergは、ウィーンの分離派会館とドイツのケルン市立美術館のディレクターを務め、現在はウィーン在住。Rodrígueは、かつてフランス・ボルドーのCAPC現代美術館館長を務めていたが、2018年に「プログラムへの要求が厳しすぎる」という理由で解任され、当時のアート界を巻き込む論争が巻き起こった。現在はサンパウロ美術館の特任キュレーターとして、ブラジルとパリを行き来している。

カッセル市長のクリスチャン・ゲゼルと、ヘッセン州の科学・芸術担当大臣である監査委員会副会長のアンジェラ・ドルンは共同声明で、「世界各国から集まった6人の著名な専門家は、それぞれ異なる芸術的、学芸的、文化的背景を持ち、また、個人としても、ドクメンタの現代性、国際性、多様性を象徴しています。選考委員会には、最も優れた、革新的な芸術監督をカッセルに誘致するための十分な時間があります」と述べている。

ゲゼルとドルンは、昨年の反ユダヤ主義をめぐる騒動についても、こう言及した。「今後、反ユダヤ主義の問題に対処することが我々の課題です。世界で最も個性的な芸術祭、ドクメンタを安全に楽しんでもらえるような計画を考えます。選考委員会が発足したことで、そのための理想的な体制が整ったと言えます」

次期芸術監督は、2023年末から2024年始めに発表される予定だ。(翻訳:編集部)

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