アート界のジェンダー格差をAIで可視化──ギャラリーの所属作家を分析する新ツールが登場

女性アーティストの認知度向上を目指す団体「Less Than Half」が、アート界のジェンダー格差を可視化するAIツールを開発した。ギャラリーや美術機関の取り扱い作家を分析し、ジェンダーの多様性を評価するという。

ゲリラ・ガールズとイルミネーター・コレクティブがNYCのダイナーに投影した《Dear Billionaire Art Colelctor》。Photo: Wendy Vogel
ゲリラ・ガールズとイルミネーター・コレクティブがNYCのダイナーに投影した《Dear Billionaire Art Colelctor》。Photo: Wendy Vogel

ギャラリーで取り扱われているアーティストのジェンダー比率を算出するAIツールが開発された。女性アーティストの認知度や評価の向上を目指す団体「Less Than Half」が開発したこのツールは、アート界におけるジェンダー格差を可視化することを目的としている。

このAIを使うことで、男性、女性、ノンバイナリーを自認する作家の割合を特定できるほか、アートコレクティブやデュオのジェンダー構成も分析できるという。また、ツールによる分析で一定の多様性基準を満たした文化機関は、ウェブサイト上に「Less Than Half Approved」と書かれた認証マークを掲載できる。Less Than Halfを率いるホール・W・ロックフェラーは、美術メディアOculaの取材に対してこう語っている。

「男性アーティストと女性アーティストの間に明らかに存在する格差や不平等、そして女性アーティストのキャリアを阻む構造的な問題に、多くの人々が目を向けてほしいと思っています。また、女性作家の作品を購入するだけでなく、彼女たちを支援する人々の力にもなりたいと考えています。つまり、女性作家を積極的に取り扱い、作品の発表やキャリアの発展、さらには美術史における評価の確立を後押しする機関を支援したいのです」

ニューヨーク近代美術館(MoMA)の創設者の一人、アビー・アルドリッチ・ロックフェラーの子孫にあたるロックフェラーは、一族が受け継いできた芸術支援の伝統と、自身がライターやコレクターとして得た美術の知識や経験を生かし、コレクターや美術機関、アート市場に働きかけている。作品の購入がアーティストやギャラリーに与える影響を意識し、十分な情報に基づいて購入先や作品を選ぶよう促すことが、その活動の狙いだ。

アート・バーゼルとUBSが発表した2025年版の「Global Collecting Survey」によると、富裕層の女性コレクターは女性アーティストの作品を購入する傾向が強く、コレクションに占める女性作家の割合は、男性コレクターより平均9ポイント高かった。さらに2024年には、美術品や骨董品への支出額も男性コレクターを46%上回ったという。ロックフェラーはこの点について次のように指摘する。

「女性コレクターは購入意欲が高く、積極的にリスクを取る購買層です。特に中価格帯の市場においては、女性コレクターが経営に苦しむ中堅ギャラリーの救いとなる可能性があります」

さらに、UBSとアート・バーゼルによる「2026年アートマーケット・レポート」では、売上高が1000万ドル(最近の為替レートで約15億8000万円)を超える大手ギャラリーほどジェンダー格差が大きいことが報告された。今後数十年で巨額の資産移転が見込まれるなか、ロックフェラーは女性コレクターの存在感がさらに高まると考えている。

「その資産の多くは、妻や娘などの女性たちに引き継がれることになります。相続によって資産を得る人もいれば、自らのキャリアで成功を収める人もいるでしょう。女性たちが経済的な力を持つ時代が訪れようとしているのです。だからこそ、世界的に展開する大手ギャラリーにとって、女性コレクターを重要な顧客として捉え、積極的に働きかける大きなチャンスだと思います」

(翻訳:編集部)

from ARTnews

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