トルコ の文化観光相メフメト・ヌリ・エルソイは9月28日、同国の地中海沿岸にあるアドラサン沖の約2100年前の沈没船から、数千点の陶器が回収されたとSNSで発表した 。アナドル通信 (AA)が伝えた。
アンタルヤ県のアドラサン沖では、2025年から水中発掘調査が進められている。調査対象は、古代地中海世界で流通していた陶器の食器を積んだ貨物船だ。
沈没船から古代の高級食器122種を回収
積み荷の中心は、トルコ南部のハタイ県アルスズにあたる古代の町ロソスで製造されたとみられる皿や鉢。文化観光省によると、ナッツを盛る皿やスープ用の鉢、魚料理用の皿、トレーなど、形状と大きさの異なる122種類が確認された。こうした製品は特にローマで人気が高く、高級食器として地中海各地で取引されていたという。
沈没船からは、エーゲ海のいくつかの島で製造されたとみられるアンフォラ(運搬・貯蔵用の壺)も見つかった。船には、複数の生産地の商品が積まれていたと考えられる。
エルソイは、発見された遺物から当時の豊かな食文化がうかがえるとして、次のように述べた。
「私たちは地中海の深みから、2100年前の食器を掘り起こしています。形や大きさが異なる122種類の皿や鉢、トレーは、当時のぜいたくな食文化を物語っています」
ロソスの陶器は、古代ローマ の政治家で弁論家のマルクス・トゥッリウス・キケロの書簡にも登場する。文化観光省によると、キケロは紀元前50年、友人のアッティクスに宛てた手紙に、彼のためにロソスの陶器を注文したと記していた。この記述からも、同地で製造された食器がローマ世界で知られていたことがうかがえる。
研究者らは、今回の発見が、古代地中海の海上交易でロソスの陶器が果たした役割を解明する手がかりになると考えている。
良好な保存状態の鍵は「粘土」
皿や鉢の多くは、良好な状態で残っていた。その一因とされるのが、輸送時の梱包方法だ。陶器は木箱に詰められ、器の間には粘土が入れられていた。この粘土が沈没時の破損を防ぎ、2000年以上にわたる保存にも役立ったとみられる。
エルソイは、その意義についてこう語った。
「木箱に詰める際に器の間に入れた粘土のおかげで、これらの遺物は今日まで良好な状態で残っていました。アナトリアの製造技術と地中海交易の歴史を伝える証拠が、そこには残されています」
沈没船からは、紀元前1世紀のアンティオキアで鋳造された硬貨も見つかり、沈没年代を特定する手がかりとなっている。発見された遺物から、この船は紀元前1世紀半ば、アンティオキア、エーゲ海、ギリシャ、イタリア沿岸を結ぶ交易網の一翼を担っていたと考えられる。
研究者らは、船がロソスを出港してローマへ向かう途中で嵐に遭遇し、浅瀬に衝突して沈没したと推定している。
現在、沈没船は水深42〜55メートルに横たわっている。水中考古学者らは水中ロボットの支援を受けながら調査を続けており、今後の発見によって、古代地中海の海運や交易網、高級食器の国際取引について新たな知見が得られると期待されている。
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