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  • 2023.06.26

「外国人はどこにでもいる」──2024年ヴェネチア・ビエンナーレのテーマが決定!

世界最大の芸術祭、ヴェネチア・ビエンナーレ。2024年4月20日に始まる次回の開催まで10カ月を切り、6月23日に「Foreigners Everywhere(外国人はどこにでもいる)」というテーマが発表された。

第60回ヴェネチア・ビエンナーレの総合ディレクターを務めるアドリアーノ・ペドロサ。Photo: Daniel Cabrel

人種差別や外国人嫌悪へのアンチテーゼ

2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレの総合ディレクターは、ブラジルサンパウロ美術館(MASP)の芸術監督アドリアーノ・ペドロサ。6月22日朝に行われた記者会見で発表されたテーマ「Foreigners Everywhere(外国人はどこにでもいる)」について彼は、アウトサイダーや外国人などを中心に、自らのキャリアのある時点で国境を超えて移動した経験のあるアーティストにスポットライトを当てるとしている。

このテーマは、2004年に生まれたアーティスト・コレクティブ、クレール・フォンテーヌのネオン管を用いた作品シリーズのタイトルにちなんだもの。一連の作品では、さまざまな色と言語で「Foreigners Everywhere」というフレーズがつづられている。ちなみに、この作品タイトルは、人種差別や外国人嫌悪に異を唱えたトリノのコレクティブ、「Stranieri Ovunque(イタリア語で「Foreigners Everywhere」の意)」の名前でもある。

ペドロサはリオデジャネイロ生まれ。歴史的にヨーロッパ人が務めてきたヴェネチア・ビエンナーレの総合キュレーターに、ラテンアメリカ人として初めて選ばれた

彼はサンパウロ美術館で、人種、ジェンダーセクシュアリティに焦点を当てた伝統的な美術史を斬新な視点で書き換える展覧会を数多く企画し、高い評価を得ている。特に注目されたのが、大西洋奴隷貿易の歴史を取り上げた「Histórias」という展覧会のシリーズで、コンパクト化した形でアメリカにも巡回している。

ビエンナーレでは、ペドロサがサンパウロ美術館で続けてきた取り組みをベースに、人種、性別、国籍の多様性を強調し、ペドロサの言葉によれば「外国人やアウトサイダー、クィア、そして先住民を称える」ことを目指す。

ペドロサは声明で、「アーティストたちは常に、都市や国家、大陸間を移動しながら、さまざまな状況の下で旅をしてきた。皮肉なことに、この現象が拡大した20世紀後半以降、人々の移住や移動に対する規制が強まっている」と指摘。「2024年のヴェネチア・ビエンナーレでは、外国人、移民、国外居住者、ディアスポラ(*1)、移住者、亡命者、難民、そして特に南半球と北半球を行き来するアーティストに焦点を当てる」と説明している。


*1 「移民」や「植民」の意。もといた国や地域から離散し、世界のさまざまな地域に定着している人々のこと。

ペドロサが掲げたテーマには、2022年に開催された第59回のビエンナーレの総合キュレーター、チェチリア・アレマーニが始めたことを受け継ぐ部分があるように思える。「Milk of Dreams」というテーマで行われた前回のビエンナーレは、女性アーティストと、自身の性自認や性表現を男女二元論に当てはめないノンバイナリーのアーティストが中心となった。200人以上の参加アーティストのうち、男性は10分の1にも満たなかった。また、数十年前の作品を中心に構成した「カプセル」というグループ展を開催し、歴史的な背景を踏まえた上で、シュルレアリスムの再興に焦点を当てたことでも話題を呼んだ。

非欧米でモダニズムはどう進化したのか

2024年のビエンナーレでペドロサは、新作と旧作に特化したセクションを設け、前者を「ヌクレオ・コンテンポラネオ(Nucleo Contemporaneo)、後者を「ヌクレオ・ストリコ(Nucleo Storico)」と名づけている。後者のセクションは、モダニズムの歴史をヨーロッパや北米以外にも広げようとするものだ。

「私たちは、ヨーロッパやアメリカにおけるモダニズムの歴史にばかり慣れ親しんでいる。一方で、南半球におけるモダニズムはほとんど知られていない。それは真に今日的な問題だと言える。だからこそ、それについてもっと学ぶこと、そこから多くを学ぶことが喫緊の課題だ」とペドロサは言う。

「ヨーロッパのモダニズムは、ヨーロッパから広く20世紀の世界へと伝播した。そこには植民地主義が絡み合っていることが少なくない。そして、グローバルサウス(*2)の多くのアーティストたちが、ヨーロッパに渡ってモダニズムに触れている。その後、モダニズムはグローバルサウスにおいてアプロプリエーション(*3)の対象になり、吸収され、解体されてきた。土着的なものを含め、その土地土地の文化との対話の中で、根本から新しい形態や様式に進化してきたのだ」


*2 グローバル化した資本主義による負の影響を色濃く受ける国や地域。低所得国が南半球に多いことから使われるようになった用語。
*3 「流用」「盗用」の意。過去の著名な作品、広く流通している写真や広告の画像などを作品の中に文脈を変えて取り込むこと。

旧作に特化した「Nucleo Storico」の一部では、アフリカアジア、ラテンアメリカなどに旅し、移り住んだイタリア人アーティストによる作品を展示する。ペドロサは、これらのアーティストを「20世紀における世界的なイタリアの芸術的ディアスポラ」と呼ぶ。

なお、ペドロサによる総合テーマは、ビエンナーレのメイン展示にのみ適用される。ビエンナーレではこれとは別に、数十の国別のパビリオンが出展し、各国のキュレーターとアーティストによる独自の展示が行われる。一部の国別パビリオンでは、すでに代表アーティストが発表されており、フランス館はジュリアン・クルーゼ、イギリス館はジョン・アコムフラ、カナダ館はカプワニ・キワンガ日本館は毛利悠子代表を務める

ヴェネチア・ビエンナーレのロベルト・チクット会長は、ペドロサのコンセプトは128年の歴史を持つビエンナーレに革新をもたらすものだと称賛し、声明でこう述べている。

「2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレは、優れたキュレーターの力で私たちを感動させてくれるに違いありません。今年の第18回ヴェネチア建築ビエンナーレのキュレーター、レスリー・ロッコが言うように、これまで顧みられなかった多くのアーティストたちが、既存の美術史から抜け落ちた部分を埋めることになるでしょう」(翻訳:清水玲奈)

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