古代の女性や子ども用「鉄製拘束具」を発見──ガリア奴隷制の実態に迫る貴重な証拠

フランス・ロワール渓谷にある約2300年前のガリア人集落跡で、鉄製拘束具5点が出土した。女性や子ども用とみられる枷も含まれ、ローマ支配以前のガリア地域における奴隷制の実態を探る重要な手がかりとなりそうだ。

アロンヌの遺跡で見つかった手錠(写真左)と足枷(同右)。Photo: Courtesy of Inrap

フランス・ロワール渓谷のアロンヌにある約2300年前のガリア人集落の遺跡から、5点の鉄製拘束具が発見されたとフランス国立予防考古学研究所(INRAP)が7月9日に発表した

Live scienceによると、発掘調査は2019年から2年間にわたって行われた。その結果、鉄器時代後期(紀元前450-前50)の拘束具や剣、槍先、鍵、馬具の金具など、質の高い金属製品を大量に発見した。

なかでも鉄製の拘束具は、この時代の遺物としては極めて珍しく、調査団にとっても予想外の発見だった。見つかったのは、両手首用の枷1点、足首用の枷1点、拘束具の断片3点。手首用の枷は直径がわずか6センチしかなく、女性や子どもに使われていた可能性が高いという。一方、足首用の枷は重さが1キログラムを超えていた。

古代ヨーロッパ西部に暮らしたケルト系諸部族の総称であるガリア人は、戦争捕虜や罪人、債務者、その家族を奴隷として使役し、農作業などに従事させていたことが知られている。奴隷は法的・社会的な自律性を失い、手枷や足枷を嵌められ、財産として扱われうる存在だった。ガリア人はほとんど文字記録を残さなかったため、ローマ支配以前のガリア地方における奴隷制の実態は長らく不明だった。

手首の拘束具の復元図。Photo: Courtesy of Inrap

INRAPによると、拘束具が出土した場所は主要な交通路の交差点に位置し、多くの職人や商人が集まって鉄や青銅などの銅合金を用いた金属加工が行われていた地区だった。同じ区域からは工房や店舗とみられる建物も見つかっており、研究者らは、この場所が奴隷交易の拠点だった可能性があるとみている。

一方で同遺跡からは、鋳造年代が5世紀以上にわたる数百枚の貨幣をはじめ、剣、鍵、フィブラ(衣服用の留め具)、指輪、お守りなども回収された。フランス文化省の古銭専門家、イザベル・ボラール=レノーがINRAPのインタビューで明らかにしたところによると、出土した剣の刃は意図的に曲げられ、貨幣の約3分の1にはやすりがけや切断、鏨(たがね)で刻みを入れた痕跡が確認された。これらの行為は、物を通常の流通から切り離し、神々への永続的な捧げ物へと変えるための儀礼だったと考えられている。

出土遺物は劣化を防ぐため、化学薬品による洗浄やガラスビーズを用いたマイクロブラスト、メスによる精密な異物除去などの保存処理が施され、安定した状態に保たれた。現在も専門的な研究が続けられており、金属製品がどのように製作され、使用され、損壊され、埋納されたのかが分析されている。また、貨幣の分析(古銭学的研究)からは、この地域の商業ネットワークや政治勢力の影響圏、貨幣に対する儀礼的な扱いについても新たな知見が得られつつある。今年の「ヨーロッパ考古学の日」(6月12日〜14日)には、90点を超える出土遺物が地元で一般公開された。

あわせて読みたい