スペインで2500年前の「神話に彩られた儀礼用台車」が出土。幻の文明タルテッソスの謎を解く発見か

スペイン南西部の遺跡で、神話の図像で彩られた約2500年前の金属製儀礼用台車が発掘された。イベリア半島では前例のない発見で、「幻の文明」と呼ばれるタルテソス文明の実像に迫る重要な手がかりとして注目されている。

カサス・デル・トゥルヌエロ遺跡から出土した儀礼用台車。Photo: Instagram/aytodeguarena

スペイン・バダホス県グアレーニャ市にあるカサス・デル・トゥルヌエロ遺跡で、神話的な図像で彩られた約2500年前の金属製儀礼用台車が発掘された。イベリア半島では前例のない発見として注目を集めている。

この発見は6月24日、マドリードのスペイン国立研究評議会(CSIC)本部で開かれた記者会見で、発掘調査の共同責任者を務めるエステル・ロドリゲスとセバスティアン・セレスティーノによって発表された。

今回見つかったのは儀礼用台車の約半分にあたり、2輪と本体の一部が良好な状態で残されていた。大きさは長さ約60センチ、高さ約47センチで、紀元前5世紀に制作されたと考えられている。青銅と鉄の部品を組み合わせた構造で、随所に精緻な神話的図像が施されている。

台車前面には古代ギリシャ神話に登場する河神アケローオスの浮彫りが配され、側面にはワシの頭とライオンの胴体を持つ幻獣グリフィンが2体表現されている。さらに支柱には、天空を支える神アトラスを思わせる、短いキルトをまとい、ひげを生やした男性像2体が腕を上げて台車を支える姿で据えられている。

カサス・デル・トゥルヌエロ遺跡から出土した儀礼用台車。Photo: Instagram/aytodeguarena
発掘中の儀礼用台車。Photo: Fran Muñoz de Llanos, courtesy Guareña Town Hall.

Arkeonewsによると、考古学者らは、この台車が宗教儀礼や祭礼の際に熾火(おきび)や芳香樹脂を載せて運ぶ移動式の焚香台として使われた可能性があるとみている。この解釈は現時点では仮説にとどまるものの、豊かな図像表現から、重要な宗教的・象徴的役割を担っていた可能性は高い。

ロドリゲスは記者会見で、この台車について「その装飾性と図像の複雑さは他に類を見ない」と評価している。

2014年に発掘が始まったカサス・デル・トゥルヌエロ遺跡は、イベリア半島南西部で紀元前5世紀に栄えたタルテッソス文明を代表する遺跡のひとつとされる。グアディアナ川上流域のラス・ベガス・アルタス地域に位置し、ブルダロ川との合流点近くにあることから、広い地域を統括する行政的中枢だった可能性も指摘されている。

これまでの調査では、馬を中心に牛、豚、犬などを儀礼的に埋葬した大規模な動物供犠の痕跡や、タルテッソス文明で初めて確認された人物の浮彫り彫刻が出土している。その中には、金のイヤリングを着けた女性像や、兜をかぶった戦士像などが含まれる。

考古学者らは、この場所が神殿、あるいは重要な祭祀空間だった可能性が高いとみている。発掘調査は現在も続いているが、調査が完了したのは遺跡全体の約3分の1にすぎない。文字資料がほとんど残されていないタルテッソス文明は、「幻の文明」とも呼ばれてきた。研究者らは、この遺跡が同文明の宗教儀礼や建築、社会構造の解明につながる重要な手がかりになると期待している。(翻訳:編集部)

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