バンクシーをめぐる2023年を総復習! 実名暴露から偽物出現、最新作の盗難事件まで
2023年、バンクシーはグラスゴー現代美術館で個展「CUT&RUN」を開催するなど精力的に活動を行った反面、壁や標識などをキャンバスとする彼のスタイルが、アート業界に様々な課題を突きつけた。2023年のニュースを通して彼の行動を振り返ろう。
バンクシーの新作が発表直後に盗まれる。窃盗犯は逮捕、作品は行方不明
バンクシーの新作を持ち去ろうとする2人。Photo: Aaron Chown/PA Images Via Getty Images
バンクシーは12月22日、ロンドン南部の交差点にたつ道路標識に新作を描いたことを自身のインスタグラムで発表した。しかしその直後、二人の男性によってこの作品は持ち去られた。男たちはすでに逮捕されたが、作品はまだ見つかっていない。新作発表から現在までの出来事を振り返る。
バンクシーの実名が明らかに! 失われた20年前のインタビューで本人が公表
ヴェネチアにあるバンクシーの《Migrant Child》(2019)。Photo: Vincenzo Pinto/AFP Via Getty Images
バンクシーの謎を紐解く英BBCラジオの人気番組「Banksy Story」の特別回で、今から20年前に行われた若きバンクシーへのインタビュー音源の未公開部分が史上初めて放送された。バンクシーはそこで、自身の実名以外にも興味深い見解を述べている。
バンクシー作品が2万円で買える!? 《バレンタイン・マスカラ》の共同保有権が販売開始
ドリームランド・マーゲイトに展示されている、バンクシー《バレンタイン・マスカラ》。Photo: Jim Dyson/Getty Images
バンクシーが2023年2月14日に発表した、イギリスの都市マーゲイトにある民家の壁に描いた《バレンタイン・マスカラ》。この作品で描写される1950年代風の鮮やかなブルーのドレスにエプロンを身に着けた女性の目は腫れ上がり、歯が折れている。彼女は虐待をした男性パートナーを投げ飛ばしたようで、倒れた冷蔵庫から男性の脚が突き出している。本作の共同保有権が、ロンドンのギャラリーから1口153ドル(約2万2000円)で販売された。
バンクシーの偽物がグラスゴーの街に現る! お馴染みのネズミモチーフに街の人は大騒ぎ
ネズミがモチーフの「本物の」バンクシー作品。Photo: Getty Images
バンクシーの14年ぶりとなる公式展「Cut & Run」がスコットランド・グラスゴーの現代美術館(Gallery of Modern Art=GoMA)で開催された。これに伴い、スコットランド最大の都市の壁は、さまざまなストリートアートで埋め尽くされることとなった。そのうちの1点は、14年ぶりとなる個展を都市の中で完結させるためにバンクシー自身が描いたのではないか、という憶測が飛び交うほど作風が酷似していた。果たして描いたのは、バンクシー本人なのか、それとも……?
バンクシー作品の所有者となった夫妻の苦悩。「この作品のせいで失ったものを取り戻したい」
イギリス・サフォーク州の民家の壁に2021年8月に描かれたバンクシー作品の前で記念写真を撮ろうとする男性。Photo: Justin Tallis/ AFP via Getty Images
世界一有名な正体不明のストリートアーティスト、バンクシーの新作が自宅の壁にあると知ったら、きっと誰もが大興奮するだろう。しかしアート業界に身を置く者にとって、それは悪夢に近い体験だ。夢が悪夢に変わる状況は、ここで紹介するイギリスのある夫妻にも起こった。バンクシー作品の所有者となった代償は大き過ぎたのだ。
バンクシーの壁画があるファームハウスが取り壊しに。誰も作品に気づかず業者も落胆
3月14日にバンクシーが発表した壁画。Photo: Courtesy Banksy
3月14日、イギリス・ケント州の海辺の町ハーンベイで、バンクシーの壁画が描かれた築500年の農家が取り壊された。バンクシーが自身のインスタグラムで明かしている。
壁画は、波状の金属板をカーテンに見立て、カーテンを開けている少年と、ネコのシルエットが描かれていた。取り壊された農家があるBlacksole Farmの敷地は、不動産開発会社Kitewoodが所有しており、その場所には15軒の住宅を建設する予定だという。
ウクライナでプーチン批判の切手が発売。バンクシーの壁画を採用
ウクライナで発売されたバンクシーの切手。Photo: Sean Gallup/Getty Images
ロシアの侵攻から1年が経過した2023年2月末、ウクライナは、ストリートアーティスト、バンクシーが2022年11月にキーウ近郊の焼け跡に描いた壁画の切手を発売した。
この壁画は、ロシアのプーチン大統領を思わせる柔道着姿の男性に対して、少年が「浮き落とし」と呼ばれる柔道の投げ技を決めている様子が描かれている。プーチンは柔道の愛好家で黒帯の有段者として知られているが、2022年初めに国際柔道連盟の名誉会長の肩書きを剥奪されている。
バンクシーがDVに対する問題提起。バレンタインに発見された新作が伝える「影のパンデミック」
マーゲイトで見つかった、バンクシーの新作《Valentine’s Day Mascara》。Photo: Courtesy The Artist
2月14日、イギリスのケント州にある海岸沿いの町マーゲイトで、バンクシーの新作壁画《Valentine’s Day Mascara》が発見された。そこには、あざのある頬、まぶたと唇が腫れ上がって歯が折れている1950年代の主婦風の女性が描かれている。
鮮やかなブルーのギンガムドレスを着て、エプロンをつけ、黄色のゴム手袋をはめた彼女は、ひっくり返された冷蔵庫とプラスチックの椅子の横で手を広げて立っている。どうやら、虐待した男性のパートナーを始末したようである。冷蔵庫からは男のズボンと靴下、黒いドレスシューズが突き出ているのが見える。
ウクライナのバンクシー壁画の盗難を主導した人物に12年の懲役刑?
ホストーメリにあるバンクシーの壁画。 Photo: Oleksandra Butova/Future Publishing via Getty Images
ウクライナでバンクシーの壁画を盗もうとしたとされる人物が、10年以上の懲役刑に処せられる可能性があるとウクライナ当局が発表した。
ウクライナ当局は2022年12月、キーウ郊外のホストーメリで、一部損壊した家屋の正面に描かれたガスマスクをつけた女性の壁画を、数人の窃盗団が盗もうとしたと報告した。ホストーメリは、ウクライナ侵攻直後、ロシア軍によって砲撃された地域だ。