人類と肉食動物の攻防の痕跡も──世界最古、43万年前の木製道具が出土
- TEXT BY ANNE DORAN
ギリシャ南部の遺跡で発掘された2つの遺物が、人類が木を道具として加工していた最古の証拠であることが判明した。その年代は約43万年前にさかのぼる。
ギリシャ南部の遺跡で発掘された2つの遺物が、約43万年前にさかのぼる、世界最古の木製道具であることが明らかになった。この成果は、1月26日付で米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文で報告された。
これらの遺物は、ペロポネソス半島中央部のメガロポリス盆地に位置する「マラトゥサ1(Marathousa 1)」と呼ばれる遺跡から出土した。同地は、約77万年前から約13万年前まで続いた更新世中期に湖岸であったとされる。遺跡からは、牙を持つゾウの部分骨格をはじめ、カメ、鳥類、齧歯類、カバの遺骸、さらには動物の解体作業に用いられた石器など、多様な遺物がこれまでに発見されている。
今回の調査で特に注目されたのは、掘削に用いられた可能性のある全長約75センチの棒状の道具と、石器の成形に使われたと考えられるポプラまたはカエデ製の手持ち道具の2点だ。いずれも約43万年前のものと考えられており、人類が木材を加工して作った「手持ち式の道具」としては、現時点で世界最古とされる。
これらの道具は、数十点に及ぶ木片とともに発見され、全て顕微鏡観察およびCTスキャンによる分析が行われた。研究の筆頭著者であり、イギリス・レディング大学の考古学者アンネミーケ・ミルクスは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「両方の遺物に切断や彫刻の痕跡が確認され、人類がそれらを加工したという明確な証拠が見つかりました」と語っている。
そのうちの棒状の道具は、ゾウの骨の間から発見された。そのことから研究者らは、この道具が死肉から肉を切り取るために使われた可能性もあるとみている。また、同じ層から見つかったハンノキの木片には、クマなどの大型肉食動物によるものとみられる深く平行な爪痕が残されており、縁には押しつぶされた繊維が確認された。これらの痕跡は、人類が獲物を解体していた現場に大型捕食者が現れ、死骸をめぐって争っていた可能性を示唆している。
更新世中期のヒト科の生物は、石や骨、木材など多様な素材から道具を作っていたと考えられている。しかし、木製道具は腐敗しやすく、その痕跡が現在まで残ることは極めてまれだ。研究者らは、今回の遺物が泥に埋没し、無酸素状態に近い湿潤環境に置かれたことで、43万年ものあいだ保存されてきた可能性が高いとみている。
今回の発見について、研究に参加したドイツ・テュービンゲン大学の古人類学者カテリナ・ハルヴァティは、phys.orgの取材に対し、「これらの道具は、初期人類の技術の中でも、これまであまり知られてこなかった側面に光を当てるものです」と語り、その意義を強調した。(翻訳:編集部)
from ARTnews
古代エジプト彫刻の常識を覆す発見! 墓荒らしが見逃した石像がサッカラ遺跡で出土|エジプトのサッカラ遺跡で、盗掘者が放置した石像が発見された。丸彫りと浮き彫りを併用したこの石像は、古王国時代に類例のない作品として、専門家たちの関心を呼んでいる。【続きを読む】Photo: Courtesy of Zahi Hawass Library
男性の後ろ脚に隠れる姿て彫られている少女。Photo: Courtesy of Zahi Hawass Library
クレオパトラの墓に新たな手がかりか。水没した港と地下トンネルを発見した研究者は「時間の問題」|エジプト・アレクサンドリア西郊、タップ・オシリス・マグナ神殿遺跡のある海岸部の沖合で、水没した古代の港が見つかった。2022年の地下トンネル発掘に続き、クレオパトラの墓を発見する鍵になるものと考古学者らは見ている。【続きを読む】Photo: DEA / G. DAGLI ORTI/De Agostini via Getty Images
150年ぶり快挙! 古代エジプト「カノプス勅令」の新たな石碑を完全な状態で発見|古代エジプト、プトレマイオス3世治世下の紀元前238年に発布された「カノプス勅令」の、これまで知られていなかった複製が完全な形で見つかった。新たな石碑の出土は実に150年ぶりだという。【続きを読む】Photo DeAgostini/Getty Images
イエスが病を癒す壁画も──宗教の変遷を物語る古代エジプトの遺跡を発見|エジプトの西方砂漠にあるハルガ・オアシスで、西暦3世紀から7世紀にかけてのものと見られる都市の遺構が見つかった。古代エジプトに初期キリスト教が浸透したコプト時代を知る手がかりとなる建造物や遺物が出土している。【続きを読む】Photo: Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
エジプトの古代都市から3人の高級官僚の豪華な墓が出土。碑文が所有者特定の鍵に|エジプト観光・古代史省が、ルクソールのネクロポリスから新王国時代(第18~20王朝時代、紀元前1539年頃から1077年頃)の3人の高級官僚の墓が発見された。【続きを読む】Photo: Egypt Ministry of Tourism and Antiquities/AP
古代エジプトの「青色」が千年の眠りから目覚める! アメリカの研究チームが完全再現に成功|アメリカ・ワシントン州立大学が率いる研究チームが、古代エジプトの幻の合成顔料「エジプシャンブルー」の再現に成功した。【続きを読む】Photo: Bildagentur-online/Schoening/Universal Images Group via Getty Images
古代エジプトの「魂の家」から手形発見。4000年前の職人技を伝える稀少な資料|約4000年前に作られた古代エジプトの粘土製模型「魂の家」から、人の手形が見つかった。埋葬用に使われたこの模型には、制作時に誤って触れたとみられる職人の痕跡が残されていた。【続きを読む】Photo: Courtesy of The Fitzwilliam Museum
「魂の家」の底面。左下の部分に手形があるという。Photo: Courtesy of The Fitzwilliam Museum
手形部分のクロースアップ。Photo: Courtesy of The Fitzwilliam Museum
前面には食べ物などが供えられた。Photo: Courtesy of The Fitzwilliam Museum
古代エジプト写本に残された「人類滅亡の予言」──5000年前の警告、その謎に研究者が挑む|エジプトにあるネクロポリス、サッカラで考古学者たちが発掘調査を行ったところ、5000年前の写本を発見した。写本を解読すると、人類に共通する「恐ろしいメッセージ」が現れたという。【続きを読む】Photo: Wikimedia Commons
世界の七不思議「アレクサンドリアの大灯台」海底から巨大石材──歴史の空白を埋める手がかりに|フランス国立科学研究センターの調査チームが、世界七不思議の1つ、アレクサンドリアの大灯台の海底遺構から22個の巨大な石材を引き上げた。アレクサンドリア港の底からは、約30年前に初めて、遺跡と断定できる柱や彫像が発見されている。【続きを読む】Photo: Courtesy GEDEON Programmes / CEAlex

紀元前に建てられたエジプト軍事施設の建築様式と役割が明らかに|エジプト北部のシナイ砂漠にある遺跡、テル・アブ・サイフィで数十年前に発見された要塞の全貌を解明する新たな手がかりが見つかった。発掘調査によって、高度な要塞システムや石灰岩の道、兵士の宿舎が姿を現した。【続きを読む】Photo: Courtesy of Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

要塞へと続く道も発見されており、この下にはプトレマイオス朝に敷かれた道が埋まっている可能性がある。Photo: Courtesy of Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

ラムセス3世の碑文をヨルダン南部の岩壁で発見!|エジプト王ラムセス3世の碑文がヨルダン南部で発見され、ファラオの影響力がアラビア半島まで及んでいたことが証明された。この発見は古代エジプトの交易ネットワークと地域支配の実態を解明する重要な手がかりとなる。【続きを読む】Photo: Universal History Archive/Universal Images Group via Getty Images

ワディ・ラム砂漠で発見されたラムセス3世のカルトゥーシュ。Photo: Jordanian Ministry of Tourism and Antiquities
世界最古のピラミッドで古代エジプト王子の墓を発見|エジプトのサッカラで古代エジプト王子の墓が発見され、複数の重要な遺物も出土した。その中には異なる時代のものも含まれており、古代エジプトの埋葬施設が長期間にわたって再利用されていたことを裏付けている。【続きを読む】Photo: Courtesy Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities
ありえない場所から古代エジプト新王国時代の集落跡を発見!|フランス国立科学研究センターの研究者らは、エジプトのマリウト湖近くのコム・エル・ヌグスで、約3500年前の古代エジプト新王国時代の集落跡を発見した。専門家は「同時代におけるエジプト西部国境の歴史を完全に書き替えるものだ」と語る【続きを読む】Photo: Courtesy of Sylvain Dhennin/Antiquity

ラムセス3世の軍司令官の墓は「リサイクル」?|エジプト考古最高評議会(SCA)の考古学調査団がエジプト北東部にあるテル・エル・マシュータ遺跡を調査したところ、古代ギリシャ、ローマ時代後期に作られた墓群とともに、ラムセス3世の時代にさかのぼる軍司令官の墓を発見した【続きを読む】Photo: Getty Images

発見された、ラムセス3世のカルトゥーシュが刻まれた金の指輪。Photo: Instagram/Luxor Times
発見された副葬品。Photo: Instagram/Luxor Times

発見された副葬品。Photo: Instagram/Luxor Times
テル・エル・マシュータ遺跡で見つかった墓の様子。Photo: Instagram/Luxor Times
エジプトのカルナック神殿で黄金の装飾品が出土|エジプト・ルクソールのカルナック神殿北西部での発掘作業中に、第26王朝初期のものと見られる黄金の指輪などの装飾品が見つかった。テーベの三柱神と呼ばれるアメン、ムト、コンスのアミュレットも含まれている。【続きを読む】Photo: Courtesy Wikimedia Commons
ツタンカーメン以来100年ぶりの快挙! 謎の王トトメス2世の墓を発見|エジプト観光・遺跡省は、古代エジプトのファラオ、トトメス2世の墓を発見したと発表した。これは1922年にイギリスの考古学者ハワード・カーターによってツタンカーメン王の墓が発見されて以来、実に103年振りの王族の埋葬室の発見となる。【続きを読む】Photo: Courtesy the Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

トトメス2世の墓から見つかった副葬品。Photo: Facebook/Ministry of Tourism and Antiquities

トトメス2世の墓の装飾。Photo: Facebook/Ministry of Tourism and Antiquities

「謎の王トトメス2世のミイラはここにある」──発掘チームが考古学史を覆す仮説を発表|古代エジプト第18王朝のファラオ、トトメス2世の墓が発見されたニュースは、古代遺跡ファンを大いに沸かせた。それ以外にも発掘チームは、この場所にトトメス2世のミイラが眠る墓室があると考えている。【続きを読む】Photo: Getty Images
古代エジプトのミイラは高級スパの香りがした!?|ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とスロベニアのリュブリャナ大学による研究チームがカイロのエジプト博物館に展示・保管されている5000年前の古代エジプトのミイラから放たれる香りを調査した結果、「高級スパ」のような香りであったと発表した。【続きを読む】Photo: Oli Scarff/Getty Images

ギザの大ピラミッドを作業員が打ち砕く動画がSNSで炎上|ギザの大ピラミッドでハンマーやノミなどの道具を使って作業する作業員の動画がソーシャルメディアで拡散された後、「管理のずさんさ」を非難するエジプト学者やエジプト議会が声明を発表するなど物議を醸している。【続きを読む】Photo: Anadolu via Getty Images
ギザの大エジプト博物館の中を公開!|実に20年越しのプロジェクトとなった大エジプト博物館が、昨年10月ついに試験公開を開始した。本格オープンに向けて最終調整に入っている同館の特徴と、文脈を重視する展示の持つ意味を紹介する。【続きを読む】Photo: Courtesy of the Grand Egyptian Museum
大エジプト博物館の主要展示室の1つ。Photo: Courtesy of the Grand Egyptian Museum
さまざまな時代のファラオや神々の像が展示されている大階段。Photo: Courtesy of the Grand Egyptian Museum
大エジプト博物館の正面外観。Photo: Zyad Sirry/Courtesy of the Grand Egyptian Museum
古代エジプトの「魔術師」が眠る墳墓を発見!|古代エジプト王のペピ2世が統治していた時代に生きた医師「ティティ・ナブ・フ」の墓が調査チームによって発見された。独特な彫刻やドローイングで墓は彩られており、当時の日常生活や文化の解明につながるとエジプト政府は発表している。【続きを読む】