人類と肉食動物の攻防の痕跡も──世界最古、43万年前の木製道具が出土

ギリシャ南部の遺跡で発掘された2つの遺物が、人類が木を道具として加工していた最古の証拠であることが判明した。その年代は約43万年前にさかのぼる。

43万年前の木製道具を様々な角度で撮影した記録用写真。Photo: Katerina Harvati, Nicholas Thompson via AP

ギリシャ南部の遺跡で発掘された2つの遺物が、約43万年前にさかのぼる、世界最古の木製道具であることが明らかになった。この成果は、1月26日付で米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文で報告された。

これらの遺物は、ペロポネソス半島中央部のメガロポリス盆地に位置する「マラトゥサ1(Marathousa 1)」と呼ばれる遺跡から出土した。同地は、約77万年前から約13万年前まで続いた更新世中期に湖岸であったとされる。遺跡からは、牙を持つゾウの部分骨格をはじめ、カメ、鳥類、齧歯類、カバの遺骸、さらには動物の解体作業に用いられた石器など、多様な遺物がこれまでに発見されている。

今回の調査で特に注目されたのは、掘削に用いられた可能性のある全長約75センチの棒状の道具と、石器の成形に使われたと考えられるポプラまたはカエデ製の手持ち道具の2点だ。いずれも約43万年前のものと考えられており、人類が木材を加工して作った「手持ち式の道具」としては、現時点で世界最古とされる。

これらの道具は、数十点に及ぶ木片とともに発見され、全て顕微鏡観察およびCTスキャンによる分析が行われた。研究の筆頭著者であり、イギリス・レディング大学の考古学者アンネミーケ・ミルクスは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「両方の遺物に切断や彫刻の痕跡が確認され、人類がそれらを加工したという明確な証拠が見つかりました」と語っている。

そのうちの棒状の道具は、ゾウの骨の間から発見された。そのことから研究者らは、この道具が死肉から肉を切り取るために使われた可能性もあるとみている。また、同じ層から見つかったハンノキの木片には、クマなどの大型肉食動物によるものとみられる深く平行な爪痕が残されており、縁には押しつぶされた繊維が確認された。これらの痕跡は、人類が獲物を解体していた現場に大型捕食者が現れ、死骸をめぐって争っていた可能性を示唆している。

更新世中期のヒト科の生物は、石や骨、木材など多様な素材から道具を作っていたと考えられている。しかし、木製道具は腐敗しやすく、その痕跡が現在まで残ることは極めてまれだ。研究者らは、今回の遺物が泥に埋没し、無酸素状態に近い湿潤環境に置かれたことで、43万年ものあいだ保存されてきた可能性が高いとみている。

今回の発見について、研究に参加したドイツ・テュービンゲン大学の古人類学者カテリナ・ハルヴァティは、phys.orgの取材に対し、「これらの道具は、初期人類の技術の中でも、これまであまり知られてこなかった側面に光を当てるものです」と語り、その意義を強調した。(翻訳:編集部)

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