AIが絵画の「変装」を見破る──20年前に盗まれた17世紀の宗教画を骨董フェアで発見

イタリア警察がAIで、20年前に盗まれた絵画を発見。子羊を巻物に描き替える偽装も、色や輪郭の照合で見抜いた。総額2億ドル(約316億円)を超える盗難品の回収に貢献したシステムが、美術犯罪の捜査を変えつつある。

2025年5月、スルモナ=ヴァルヴァ教区に聖アゲネーゼの絵画が返還された時の様子。Photo: Courtesy Diocese of Sulmona-Valva

2024年秋にイタリア警察が骨董フェアで撮影した写真をAIで分析したところ、出品されていた油彩画の1点が、20年前にラクイラ近郊の教会から盗まれた作品であることが判明した。

美術犯罪の捜査を専門とするイタリア国家憲兵隊文化財保護司令部は、2023年11月からAIを活用し、盗まれた美術品や考古遺物の特定に取り組んでいる。使用するのは「SWOADS(Stolen Works of Art Detection System/盗難美術品検出システム)」だ。2013年に同部隊に加わったITエンジニアのサルヴァトーレ・ラピカヴォリらが開発した。

BBCによると、今回の発見のきっかけは、2024年10月に警察官がパルマの骨董フェア「メルカンテインフィエラ(Mercanteinfiera)」を訪れたことだった。約40年の歴史を持つこのフェアにはヨーロッパ各地から出展者が集まり、会場は「骨董の村」さながらのにぎわいを見せる。

警察官が会場で撮影した写真をデータベースにアップロードすると、SWOADSが巻物を持つ若い女性の油彩画を盗難品の候補として検出した。その絵は、アブルッツォ州スルモーナの小さな教会、ヴィルゴ・ポテンスから20年前に盗まれた17世紀の聖アグネス像によく似ていた。

ただし、盗難前とは異なる点があった。聖アグネスが抱いていた子羊が上塗りされ、ラテン語が記された巻物に描き替えられていたのだ。それでもSWOADSは、色の濃淡や大まかな輪郭の類似性を照合し、改変後も残る作品固有の「視覚的な指紋」を捉えた。

こうした技術の活用は、盗難美術品の回収に成果を上げている。BBCによると、SWOADSはこれまでに大型の絵画や彫像300点以上に加え、硬貨、書簡、メダルなど16万5000点以上の回収に貢献。その総額は2億ドル(約316億円)を超える。

聖アグネスを描いた絵画は2025年に持ち主の教会に返還された。ただし、窃盗犯の逮捕には至っていない。(翻訳:編集部)

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