AIが1500年前の「ボードゲーム」のルールを解明──古代ローマにもブロッキングゲームの存在
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
AIが1500年前の「遊び」のルールを解読した。オランダで出土した用途不明の石板に残る微細な摩耗痕を解析した結果、文献にはないボードゲームの存在が明らかになったのだ。

オランダのローマ時代の遺跡から出土した奇妙な石板が、AIによるシミュレーションによって、特定のルールをもつボードゲームであった可能性が高いことが判明した。この成果は、ライデン大学の研究チームによって学術誌『Antiquity』で発表された。
この石板は約1500年前のもので、現在のオランダ・ヘールレン(かつてローマ都市・コリオヴァルムがあった場所だ)にあるローマ博物館に収蔵されている。北フランスの石灰岩で作られたこの物体は建築資材を再利用したものと見られ、上面に幾何学的な線が刻まれているのが特徴だ。一見するとゲーム盤のようだが、「ラトルンクリ」のような既知のローマのゲームとは形式が一致せず、単なる建築用の習作ではないかとの説もあり、長らく用途が謎に包まれていた。
論文の筆頭著者で、ライデン大学の考古学者ウォルター・クリストらの研究チームは、この石板の正体を突き止めるため、微細な痕跡分析とAIシミュレーションを組み合わせた調査を行った。
まず、石の表面を顕微鏡で観察したところ、刻まれた線に沿って特定の領域だけが滑らかに摩耗していることが確認された。これは、ガラスや石で作られた硬い素材の駒が、盤上を繰り返し移動したことによる摩擦の痕跡と見られる。

さらに研究チームは、汎用ゲームシステム「Ludii」を使用し、ヨーロッパの伝統的なゲームルールに基づいた130通りのシミュレーションを実施した。AIエージェント同士に様々なルールで対戦させ、実物に残された摩耗のパターンを再現できるかを検証したのだ。その結果、最も痕跡と一致したのは「ブロッキングゲーム」と呼ばれる種類のルールだった。
ブロッキングゲームとは、片方のプレイヤーが多数の駒を持ち、少数の駒を持つ相手を追い詰めて動けなくすることを目指す非対称なゲームだ。特に、一方が4つの駒、もう一方が2つの駒を持つ設定において、実物の石板に見られる「特定の対角線が頻繁に使われる」という摩耗の跡が忠実に再現された。
このタイプのゲームは、中世以降のスカンジナビアで遊ばれていた「ハレタウル(Haretavl)」などが知られていたが、ローマ時代の文献には記述が見当たらなかった。今回の発見は、ブロッキングゲームがローマ時代後期にはすでに存在し、人々に遊ばれていた可能性を強く示唆している。
クリストらは、AIシミュレーションと使用痕分析の組み合わせが、考古学的に見えにくい「遊び」の歴史を解明する強力なツールになると結論付けている。


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