100ドル弱の絵画が4100万円に──AI検索で「失われた傑作」と判明

1960年代にリサイクルショップで100ドル(現在の為替で約1万6000円)足らずで購入した絵画が、AI検索がきっかけでスコットランドの著名画家フランシス・カデル(1883-1937)の真作と判明した。作品は18万9200ポンド(約4100万円)で落札された。

フランシス・カデル《室内──黒衣の婦人》Photo: Courtesy Lyon&Turnbull

1960年代にアメリカニューヨーク州のリサイクルショップで100ドル(現在の為替で約1万6000円)足らずで購入された絵画が、スコットランドの著名な画家フランシス・カデル(Francis Campbell Boileau Cadell)の真作だったことが判明した。ニューヨーク・タイムズが報じている。

絵画の持ち主は、フロリダ州に住む88歳のヘレン・プロトキン。彼女は1960年代、ニューヨーク州ホワイトプレーンズのリサイクルショップを訪れた際、数多く並んでいた絵画の中から1点の作品に目を留めた。美術の学士号を持つ彼女が愛するフォーヴィスム(野獣派)を思わせる作風だったためだ。プロトキンによれば、購入額は100ドル未満だったという。

その後60年以上にわたり、この絵はプロトキン家の壁に飾られていた。転機が訪れたのは昨年末だった。息子のバリーが母親の家を訪れた際、グーグルのAIアシスタント「Gemini」で作品を調べてみることを思いついたのだ。画像をアップロードすると、Geminiは右上に記された「F.C.B. カデル」の署名を特定した。

フランシス・カデルは、ジョン・ダンカン・ファーガソン、レスリー・ハンター、サミュエル・ペプローらとともに、色彩表現を重視したポスト印象派の画家グループ「スコティッシュ・カラリスト」の一員として知られる。フランスで学び、フォーヴィスムの影響を受けた画家でもあり、プロトキンの確かな審美眼を裏付けた。

親子はその後、スコティッシュ・カラリストに深い見識を持つエディンバラのオークションハウス、ライアン&ターンブル(Lyon & Turnbull)に作品を持ち込んだ。調査の結果、この絵は約100年前に同社でフランシス・カデル《室内──黒衣の婦人(Interior: The Lady in Black)》として販売されていた作品であることが判明した。

制作時期は1920年代半ばと推定されている。当時のカデルはキャリアの絶頂期にあり、6階建てのジョージアン様式のタウンハウスを購入したばかりだった。作品は、その豪華な邸宅内のスタジオで描かれたとみられている。一方で、なぜこの作品が1960年代にニューヨークのリサイクルショップに並んでいたのかは依然として分かっていない。

同作について、ライアン&ターンブルのスペシャリストで、スコティッシュ・カラリストに関する著書を執筆中のアリス・ストラングは、アートネットの取材に次のように語っている。

「これはカデルのキャリアの頂点を示す作品です。アール・デコという言葉が生まれる以前から、その様式の要素を取り入れた極めてモダンな表現が見られます。彼は自らの技量を楽しむかのように披露しており、自身を象徴する視覚的モチーフの数々を1つの画面に見事に集約しています」

《室内──黒衣の婦人》は6月4日のオークションに出品され、18万9200ポンド(約4100万円)で落札された

高額な売却益について、プロトキンはニューヨーク・タイムズの取材に対し、息子たちに譲るつもりだと語った。ただし、ひとつだけ願いがあるという。それは、新たな所有者が時折でも作品を一般公開してくれることだ。いつの日か孫たちがこの絵を目にし、「見て、おばあちゃんの絵だよ」と話す姿を想像しているという。

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