石の隙間から金貨や宝石など「隠し財宝」が続々! 持ち主は1400年前の戦乱に巻き込まれた富裕層?

9月25日、イスラエルのハイファ大学は、イスラエル北部にあるガリラヤ湖東岸の古代都市ヒッポスで行った発掘調査で、7世紀のものと思われる約100枚の金貨と数十個のイヤリングを見つけたと発表した。

古代都市ヒッポスで見つかった大量の金貨とイヤリング。Photo: Courtesy of Dr. Michael Eisenberg, University of Haifa

イスラエルにあるハイファ大学の研究チームは、イスラエル北部のガリラヤ湖近郊にある古代都市ヒッポスの遺跡で発掘調査を行っている。最近では4世紀後期から5世紀前期に建てられた世界最古の老人ホームを発見しニュースとなったが、9月25日に新たな発見があったことを発表した。

ザ・タイムズ・オブ・イスラエルが伝えるところによると、今年7月、調査チームの金属探知機オペレーターであるエディ・リップスマンが、今回の調査対象区域外である約6年前に発掘調査を終えていた場所にたまたま通りがかった。すると、大きな石の近くで彼が所持する金属探知機が反応し、石の隙間を調べると、大量の金貨が現れたのだ。

リップスマンは大学による声明で、「探知機が狂ったように反応しました。信じられませんでした。金貨が次々と姿を現したのです」と当時の状況を振り返った。

調査チームが慎重にその区域を発掘したところ、97枚の金貨と、精巧な細工で作られた真珠や半貴石、ガラスのイヤリングが数十個も出土した。コインはローマ帝国のユスティヌス1世(518-527年)の治世からヘラクレイオス帝(610-613年)の初期に渡って鋳造された、一番高価なソリドゥス貨に加えて、その半分の価値のセミシス貨、3分の1のトレミシス貨が含まれていた。調査を率いるマイケル・アイゼンバーグ博士はザ・タイムズ・オブ・イスラエルの取材に、「約1400年前の金のコインや宝飾品を新品のような状態で発見するのは、稀有な体験です」と発見の驚きを話した。

その中でも珍しいものは、610年頃、ヘラクレイオス帝とその息子がフォカス帝に対する反乱の最中にキプロスで鋳造したトレミシス貨で、この硬貨がイスラエルで見つかったのはこれで2例目だ。

今回の調査で見つかった、ヘラクレイオス帝の肖像が描かれた希少な金貨の表面。Photo: Courtesy of Dr. Michael Eisenberg, University of Haifa

アイゼンバーグは、この遺跡では同時代の金貨や銅貨がまとまった形で発見されるケースが度々あり、今回の発見もそれらと同様に「緊急秘蔵品」に分類されると指摘した。アイゼンバーグは以下のように説明する。

「この時期、ペルシアのサーサーン朝軍がシリア席巻後にヒッポス近郊に向かって南下し、イスラエルを征服することになります。ヒッポスの人々は敵の接近を察して放棄地に家の財産を集めて隠し、危険が過ぎ去ったら取り戻そうとしたのでしょう。しかし、彼らが戻ってくることはありませんでした」

614年、サーサーン朝軍がイスラエルの地に侵攻し、その約15年後、ビザンティンがこの地域を再征服したが、636年にはイスラム軍によって奪われた。ヒッポスは徐々に小さな町へと衰退し、749年の地震で完全に破壊され、最終的に放棄された。

アイゼンバーグは、今回見つかった宝物は、教会や公共機関ではなく家族の所有物であった可能性が高いと考えている。その証拠として、数十個の半貴石やガラスをあしらった金製イヤリングの存在を挙げた。彼は、「これらのデザインは多様なものであり、見た目は似ていても、全く同じものは一つもありません」と指摘する。

この宝物の発見は、ビザンティン時代後期のこの地の人々の生活における従来の仮説にも疑問を投げかけている。ハイファ大学の研究チームは、26年間に渡ってヒッポスで調査を続けてきたが、その時代の建築遺構はローマ時代やビザンティン時代初期のものに比べて壮大なものではなかった。そのため研究者たちは、当時の人々は貧しく、質素な生活を送っていたと考えていたが、今回の発見で裕福な層が存在するに足る都市の繁栄があったことが示唆された。

それを受けてアイゼンバーグは、「一つの秘蔵品で考えが変わるわけではありませんが、研究はまだ始まったばかりです、今回の発見は、ビザンティン時代末期のヒッポスにおける人々の暮らしのレベルについて再考する道を開く可能性があります」と語った。

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