バンクシーが「盲目的な愛国心」批判か──新作彫刻めぐりSNS上で解釈広がる

正体不明のアーティスト、バンクシーの新作彫刻がロンドン中心部に出現した。顔を大きな旗で覆われた男が台座から一歩を踏み出す姿をかたどった作品で、SNS上では「盲目的な愛国心」への批判と受け止める声も広がっている。

ロンドンに出現したバンクシー作の巨大彫刻。Photo: Vuk Valcic/SOPA Images/LightRocket via Getty Images
ロンドンに出現したバンクシー作の巨大彫刻。Photo: Vuk Valcic/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

正体不明のアーティスト、バンクシーロンドン中心部に大型彫刻を出現させた。本作は、スーツを着た男が大きな旗を掲げながら、台座から一歩を踏み出す姿を表現したもので、旗は男の顔を覆い隠している。4月29日の早朝にウェストミンスター区に設置されたこの彫刻にはバンクシーの名が刻まれており、4月30日の午後には、本人がInstagramに設置の様子を収めた動画を投稿した

設置以降、現場には作品を一目見ようとする人々が次第に集まり、30日午後には業者によって作品の周囲に安全柵が設けられた。現場を管轄するウェストミンスター市議会は、バンクシーの新作について次のようにコメントしている。

「バンクシーの彫刻作品がウェストミンスターに登場したことを非常にうれしく思います。この作品は、市内のパブリックアート・シーンに彩りを添えてくれるに違いありません。作品保護の措置はすでに講じていますが、当面の間は一般公開を続けます」

作品が設置されたウォータールー・プレイスは、19世紀における帝国主義や軍事的優位をたたえる空間として設計された区域とされる。周辺にはエドワード7世像、ナイチンゲール像、クリミア戦争記念碑などが並び、こうした場所に、顔を旗で覆われた男の彫刻が置かれたことで、本作を政治的なメッセージとして読み解く見方も出ている。

BBCのポッドキャスト番組「The Banksy Story」を手がけたジェームズ・ピークは、本作を権力者への批評として読み解いている。台座に乗った男が、自国の旗で視界を塞がれたまま足を踏み外そうとしている構図には、旗を掲げながらも周囲が見えなくなった権力者の姿が重ねられているという。またピークは、作品がウォータールー・プレイスに置かれたことにも意味を見出している。イギリスには侵略と征服を重ねてきた帝国主義の歴史があり、その延長線上に、バンクシーが嫌悪する極端なナショナリズムがあるからだ。Instagramのコメント欄でも、本作を「盲目的な愛国心」への批判と受け止める声が多く見られた。

近年バンクシーはロンドンで活発に活動しており、2025年12月にはベイズウォーター地区で、地面に横たわって空を見上げる二人の子どもを描いた壁画を登場させた。本作は、長くホームレス問題の象徴とも見なされてきたセンター・ポイント・タワーを指しているように見えたことから、ロンドンの住宅危機やホームレス問題への言及と受け止められている。2025年9月には、王立裁判所の建物に、血のついたプラカードを持って地面に倒れる抗議者と、その上から木槌を振り下ろす裁判官を描いた壁画を制作した。この作品は、ロンドンで行われたパレスチナ支持のデモで900人が拘束されたことを受け、抗議の意思を示すものとして解釈された。壁画はその後撤去され、裁判所側は、登録建造物としての景観や特徴を維持する法的義務があると説明している。

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