ナン・ゴールディンら、公教育でのAI使用停止をマムダニ市長に要請──「創造性はAIでは育たない」

6月22日、ナン・ゴールディン、モリー・クラブアップルらニューヨークを中心に活動する約500人のアーティスト、作家、俳優がゾーラン・マムダニ市長に対し、公立学校での人工知能(AI)の利用を2年間停止するよう求める公開書簡を発表した。

写真家のナン・ゴールディン。2024年11月22日撮影。Photo: Fabian Sommer/picture alliance via Getty Images

6月22日、ニューヨークを中心に活動する約500人のアーティスト、作家、俳優が同市のゾーラン・マムダニ市長に対し、公立学校での人工知能(AI)の利用について2年間の使用停止期間(モラトリアム)を求める公開書簡を発表した

書簡を公開したのは、教師や保護者らで構成される市民団体「AIモラトリアム・コアリション(AI Moratorium Coalition、AIM)」。署名者には、写真家のナン・ゴールディン、作家・イラストレーターのモリー・クラブアップル、写真家・映画作家のローリー・シモンズ、画家のキャロル・ダナム、美術批評家のジェリー・サルツらが名を連ねている。

書簡では、使用停止の対象を2〜3歳児クラスから高校3年生までの教育課程としている。また、生成AIはニューヨークを世界有数の芸術・文化都市へと押し上げてきた無数のクリエイターの作品を無断利用することで成り立っていると批判し、教育現場への導入は子どもたちのプライバシーや教育格差の面でも深刻な問題を引き起こすと訴えている。

さらにマムダニ市長に向けて、「生まれながらの創造者であり、本来の革新者であり、明日のリーダーであるこの都市の子どもたちの未来が、地球上で最も裕福な人々をさらに豊かにするためだけに犠牲にされています。あなたには、この子どもたちのために立ち上がってほしいのです」と呼びかけた。

また書簡では、ChatGPTなどのAIソフトウェアが、子どもの成長において重要な時期の批判的思考力(クリティカル・シンキング)や創造性を損なうおそれがあるとする複数の研究を引用。世界有数の教育政策シンクタンクであるブルッキングス研究所のレポートも、「現時点では、子どもの教育におけるAIの利用がもたらすリスクは、その恩恵を上回る」と結論づけている。

ナン・ゴールディンはHyperallergicの取材に対し、「AIはアーティストたちの仕事を奪っています。最も幼く、最も無防備な子どもたちへの利用を許せば、AIは子どもたちの注意力と未来まで奪うことになるでしょう」と語った。

2026年6月9日、ニューヨーク市庁舎前で行われたAIMによる集会。Photo: Couetesy AIM

同市での教育現場におけるAI使用停止を求める活動は2025年8月に始まった。今年の6月9日には、市議会議員の過半数が署名する書簡をマムダニ市長に送り、専門家や市民の参加を得て「厳格なガードレール(安全基準)」が整備されるまで、学校でのAI利用を「直ちに停止」するよう要請した。保護者や教育関係者による請願の署名も4000人を超えている。そして6月24日には市議会による公聴会が開かれ、公立学校におけるAIのデータプライバシーやセキュリティ上の懸念について議論された。

学校教育に浸透するAI機能

一方、全米の教育現場ではAIを活用した授業支援ツールの導入も進んでいる。リテラシー支援プラットフォーム「MagicSchool」や、カーン・アカデミーが開発したAI個別指導ツール「Khanmigo」などが代表例だ。

AIMのメンバーであり、教育現場でのAIの慎重な活用を訴える保護者団体「Parents for AI Caution in Educational Spaces(PACES)」の創設者ケリー・クランシーはHyperallergicの取材に対し、学校で使用される多くのパソコンにはGoogle Geminiが搭載されているほか、広く利用されている読書プラットフォーム「HMH」にもAI機能が組み込まれていると指摘した。

さらに書簡では、AIが企業による生徒データの第三者提供を助長し、ソフトウェアへの早期依存を通じて将来の消費者を育成することになりかねないとの専門家の懸念にも言及。引用した報告書では、教育分野におけるAI利用が人種的・性的バイアスと関連する可能性も指摘されている。

公開書簡に署名したフランス系カリブ人のサウンド・パフォーマンスアーティスト、シルヴァン・スークレは、今年9月にブルックリンの幼稚園へ入園する娘を持つ保護者でもある。彼はHyperallergicの取材に対し、「資本主義都市ニューヨークで、外国人として娘を育てながら芸術活動を続けるなかで学んだのは、失敗なしに学びはないということです。娘には間違えてほしい。なぜなら、学びとはデータを処理することではないからです」と話した。(翻訳:編集部)

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