エジプト・サッカラ遺跡で4000年前の重要レリーフが盗まれる──電動のこぎりで墓の壁から切断

10月4日、エジプト観光・遺跡省がエジプトのサッカラ遺跡の墓の壁から4000年前の希少な石灰岩レリーフが持ち去られたと発表した。レリーフは電動のこぎりで切り取られたとみられる。

サッカラ遺跡にある古代エジプトのピラミッドと石の彫刻。Photo: Getty Images

エジプト観光・遺跡省は10月4日に声明を発表し、サッカラ遺跡の墓から4000年前の貴重な石灰岩レリーフが盗まれたと伝えた。

首都カイロから南へ約30キロの場所にあるサッカラ遺跡は、古代エジプトの重要都市であったメンフィスの近くにあることから第2王朝時代(紀元前2890年頃〜紀元前2686年)より王家や高官の墓地としても使用されてきた。遺跡の広い土地にはピラミッドや墳墓などが数多く残されている。

盗まれたレリーフは、第5王朝時代(紀元前2500年-紀元前2350年)の「女神マアトの神官」や「王宮監督官」といった称号を持つ高位官僚ケンティ・カの墓の壁にあったもので、ARAB NEWSの報道によると、2025年5月にイギリスの調査団によって消失が確認されたという。ケンティ・カの墓はマスタバ様式の墓の複合体の一部として1950年代に発見され、その後封印されていた。複合体は2019年から本格的な調査が開始され、最近では古代エジプトの王子の墓と、ファラオの医師兼「魔術師」の墓が発見されている。

盗まれたレリーフの大きさは40センチ×60センチで、古代エジプトの3つの季節である、夏から秋にかけてナイル川が増水する農閑期のアケト(氾濫期)、冬から春にかけて種まきを行うペレト(成長期)、春から夏にかけて収穫を行うシェム(収穫期)の様子が描かれていた。地元メディアの報道によれば、レリーフは電動のこぎりで壁から切り取られていたという。

サッカラ遺跡で見つかった石灰岩レリーフ。ボローニャ考古学博物館蔵。Photo:Wikimedia Commons

今回の盗難について、考古学者のアブ・デシシュはCBSニュースに対し、「これは単なる装飾品ではなく、古代エジプトの信仰における生命の循環、農業、豊穣に関連した深遠な象徴的意味を持つ重要なものです。そのことは、盗んだ者がレリーフの真の価値と学術的重要性を理解していたことを示唆しています」と語った。

レリーフが消失して以降、墓の内容物の全てを目録化するための考古学委員会が設置された。エジプト観光・遺跡省によると、「必要な全ての法的措置が取られ、事件全体が検察に付託された」という。

最近、古代エジプトの重要遺物が盗まれる事件が続いている。先月にも、エジプト博物館の職員が3000年前のアメンエムオペ王の純金製腕輪を盗んで最終的には4025ドル(約60万円)で売られ、腕輪は溶かされたと報じられた。(翻訳:編集部)

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