ローマ「トレビの泉」鑑賞が有料に。オーバーツーリズム対策強化、年間12億円の収入を見込む

イタリア・ローマ市が新たなオーバーツーリズム対策の導入を発表した。それによると、観光名所の1つである「トレビの泉」に、来年2月から370円の入場料が課されることになる。イタリアではヴェネチアでも、日帰り旅行客から入場料を徴収している。

ローマのトレビの泉を取り囲む観光客(2025年9月撮影)。Photo: Seyit Konyali/Anadolu via Getty Images

12月19日、ローマ市長のロベルト・グアルティエーリは、来年2月1日からローマ観光の人気スポット「トレビの泉」周辺への立ち入りに2ユーロ(約370円)の入場料を課すことを発表した。トレビの泉は「泉に背を向けて硬貨を投げ入れるとローマを再訪できる」という言い伝えで知られ、同市でも特に人気が高いが、2月以降この噴水を間近で見たい場合はチケットの購入が必要となる。適用される時間帯は毎日午前9時から午後9時まで。

ローマ市は2024年12月から、18世紀にバロック様式で建造された壮大な噴水の混雑緩和のため、周辺に入れる人数を一度に最大400人までに制限する規制を実施していた。今回発表された入場料の徴収で、同市は混雑対策をさらに強化することになる。

グアルティエーリ市長によれば、2025年にトレビの泉を訪れた観光客は1日平均で3万人近く、1月1日から12月8日までの総数は約900万人にのぼる。市当局は入場料の導入で、年間約650万ユーロ(約12億円)の収入が見込まれると試算している。ローマでは、公共空間における歴史的遺産の維持管理費増が市財政の重荷になっているが、入場料収入によってその負担が大幅に緩和される見込みだ。

トレビの泉に加え、マクセンティウス帝の別荘、ナポレオン博物館、バラッコ古代彫刻美術館、カルロ・ビロッティ美術館、ピエトロ・カノニカ博物館などのローマの文化施設も有料化される。市当局によると、入場料は最大5ユーロ(約920円)で、ローマ市民は引き続き無料。それについてグアルティエーリ市長は、19日の発表でこう述べた。

「文化は市民の基本的権利であると考えています。ローマ市民が無料で美術館・博物館を鑑賞できるのは正しいことであり、確固たる権利です」

イタリアが観光公害に悩まされていることは広く知られている。毎年何百万人もの観光客が文化施設や歴史的建造物に押し寄せ、騒音やゴミの投げ捨て、不注意による汚損や破壊などの問題が深刻化しているからだ。今年6月にはフィレンツェウフィツィ美術館で、18世紀の肖像画の前で自撮り写真を撮ろうとした観光客が足を滑らせて後ろに倒れ、カンバスに小さな亀裂が生じる事故があった。

また、同月にはヴェローナのパラッツォ・マッフェイ美術館で、ニコラ・ボッラがスワロフスキークリスタルを敷き詰める手法で制作した《ファン・ゴッホの椅子》を、観光客の男性が誤って破壊している。椅子に腰掛けるふりをして撮影をしようとしたこの男性が、よろめいて椅子に座ってしまったことが原因だった。(翻訳:石井佳子)

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