モネ作品を汚損した活動家に無罪判決。ストックホルムの裁判所は「作品損傷の意図なし」と判断

スウェーデン国立美術館で展示中のモネ作品に赤いペンキを塗った環境活動家6人に対し、ストックホルムの裁判所は無罪判決を下した。彼らは2023年6月に行った抗議行動により器物損壊罪で起訴されていた。

モネ《ジヴェルニーの画家の庭》(1900)に赤いペンキを塗った2人の活動家。Photo: Courtesy of Atersall Vatmarker
モネ《ジヴェルニーの画家の庭》(1900)に赤いペンキを塗った2人の活動家。Photo: Courtesy of Atersall Vatmarker

12月8日、ストックホルムの裁判所は、クロード・モネの《ジヴェルニーの画家の庭》(1900)を保護するガラスケースにペンキを塗った活動家6人に対し無罪判決を下した。裁判所は、作品を損傷する意図は活動家になかったと判断した。

活動家たちの抗議行動の場となったのは、スウェーデン国立美術館。2023年6月、「The Garden」と題された展覧会の会場で、2人の若い女性がピンクと紫のアヤメを描いた《ジヴェルニーの画家の庭》の保護ガラスに赤いペンキを塗った。その後、環境活動団体「Återställ Våtmarker(湿地を取り戻せ)」は声明を出し、Twitter(現X)とFacebookに抗議の様子を収めた動画を投稿。映像では、活動家たちが「気候変動は危機的状況にある」「私たちの健康が脅かされている」と叫んでいる。同団体の広報担当者は当時、AFP通信の取材に対してこう語った

「モネが描いた美しい庭園は、ほどなくして遠い過去のものになるでしょう。私たちは二酸化炭素の排出量を31%削減すべきです。しかし、排出量は増加する一方。許し難い事態です」

スウェーデン国立美術館によれば、絵画そのものに損傷はなかったというが、抗議を実行した2人の女性と環境活動団体のメンバー4人は器物損壊罪で起訴された。裁判所は、少量のペンキが額縁に付着したことを認めつつも、被告らが保護ガラスに覆われた作品を選んだこと、水溶性のペンキを使ったことを重視した。こうした点を踏まえ、取り返しのつかない損害を与える意図はなかったという団体側の主張が認められ、無罪判決が下された。

スウェーデン国立美術館はAFP通信に対し、芸術作品を危険にさらす行為には当然反対すると述べている。さらに同館の館長代理を務めるペル・ヘドストロムは、「文化遺産には計り知れない価値があり、いかなる理由であっても攻撃や破壊行為を容認することはできない」と強調した。

こうした抗議活動は今年も世界各地で相次いでおり、著名な美術作品や文化施設が標的となっている。活動家たちは、変化を起こす猶予があるうちに市民や政府に気候危機と向き合わせるためには、賛否両論を呼ぶこの手法こそが必要だと主張している。(翻訳:編集部)

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