レオナルド・ディカプリオはいかにして一流コレクターになったのか? ピカソにバスキア、グルスキーetc. 所有作品も紹介【アートを愛するセレブたち Vol. 7】

映画史に残る数々の名作に出演し、世界を魅了し続ける名優レオナルド・ディカプリオ。熱心な環境活動家、一流のアートコレクターとしても知られる彼は、いかにしてアートに出合い、のめり込んでいったのか。

ニューヨークのジャズ・アット・リンカーン・センターでで開催された、映画『ドント・ルック・アップ』ワールドプレミアでのレオナルド・ディカプリオ。2021年12月5日撮影。Photo: AP/Aflo

巨匠ダ・ヴィンチとの数奇な縁

「父はかつて、わたしのファーストネームの由来をこう話してくれました。わたしを妊娠中の母と一緒にイタリアフィレンツェにあるウフィツィ美術館を訪れた際、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の前で、胎児のわたしが母のお腹を激しく蹴り始めたというんです。父はそれを何かのサインと感じ、わたしを“レオナルド”と名付けたそうです」

自身の名前の由来をそう話すレオナルド・ディカプリオの父は、ロバート・ウィリアムスやロバート・クラムら、ロサンゼルスのイラストレーター集団と親交が深く、その影響でディカプリオ自身、幼い頃からアンダーグラウンドなアート界に親しんできたという。

「1970年代から80年代ごろのことですが、父とほぼ毎日通っていた書店でいつもアーティストたちと交流していました。また、野球のトレーディングカードをはじめ、子どもの頃から何かを収集するのが大好きでした。今も何箱も持っていますが、多分いくらにもならないでしょう(笑)」

1993年の主演映画『ギルバート・グレイプ』で大ブレイクして以来、ハリウッドで最も成功を収め、最も稼いだ俳優の一人となったディカプリオは、出演料の大半を様々なジャンルのアート作品に投資するアートコレクターとしても知られている。

「私がアートを理解し始めた1980年代、ニューヨークでは、アンディ・ウォーホルジャン=ミシェル・バスキア、フランチェスコ・クレメンテ、ジュリアン・シュナーベルらが最も注目を集めていました。彼らは私のヒーローであり、特にバスキアは今でも大ファンです」

2018年12月5日、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチのプレビューに姿を現したレオナルド・ディカプリオ。Photo: Shutterstock/Aflo

アートフェアやオークションの常連。ハリウッド屈指のアートコレクターに

いまやアート・バーゼルなど、業界最大級のアートフェアの常連でもあるが、彼が最初に購入した作品の1つがジャン=ミシェル・バスキアのドローイングだったことは、あまり知られていない。以降、2011年にクリスティーズ・ニューヨークでサルヴァドール・ダリの《騎士》を120万ドル(現在の為替で約1億6000万円)で、またオスカー・ムリーリョの《under the influence》を40万ドル(約5400万円)で購入。その数年後には、ブルックリンを拠点とするアーティスト、ジャン=ピエール・ロワの《Nachlass》を手に入れている。ほかにも、ディカプリオの膨大なコレクションには、パブロ・ピカソの《Fillette》(1993)と名付けられた小さなドローイングや、ウォルトン・フォードの《The Tigress》、村上隆の《Mononoke》などといった作品が含まれる。

アートをこよなく愛する彼はまた、世界的に有名な環境活動家でもある。2013年に自身の活動の一環としてチャリティーイベント「The 11th Hour」を開催。会場には彼のプライベートコレクションから、マーク・グロッチャンの《Untitled(Standard Lotus No.11, Bird of Paradise, Tiger Mouth Face 44.01)》や、アンドレアス・グルスキー《Ocean V》など作品が展示され、大きな話題となった。同時開催されたチャリティオークションでは、画家エリザベス・ペイトンによる彼の肖像画が100万ドル(現在の為替で約1億3000万円)で落札されるなど、大成功を収めた。

「子どもの頃は、よく自然史博物館に通っていました。化石や恐竜に非常に興味があり、大人になったらコレクションしようと思っていました。実際、肉食恐竜のモデルを何体か持っています。もう一つ収集しているのが、ハリウッドの黄金時代に制作された、ヴィンテージポスターです。わたしに言わせれば、これらは本当に過小評価されているジャンルです。なぜなら、映画ポスターのリトグラフ版画の中には、本来広告として壁に貼られていたものもあり、ほとんどが一点もの。もっと注目されるべきです」

2021年11月3日、イギリス・グラスゴーで開催された国連気候変動会議(COP26)に参加し、ケルヴィングローブ美術館・博物館を訪れたレオナルド・ディカプリオ(写真左)とチャールズ国王(同中央)、デザイナーのステラ・マッカートニー(同右)。Photo: Owen Humphreys/Pool via Rewters/Aflo

バスキア購入は「上出来」だった

多くの美術評論家やギャラリストからも一目を置かれ、デイヴィッド・ラシャペル、パトリック・デマルシュリエ、そしてグレッグ・ゴーマンなどファッション写真の巨匠からアマチュア画家まで、多くのアーティストを刺激するディカプリオ。アートとともに生きる彼は、駆け出しコレクターの頃をこう振り返る。

「名前を知ってもらえるようになってから、ニューヨーク・ソーホーのギャラリーシーンと深く関わるようになり、作品をコレクションするようになりました。最初は、どうやって集めれば良いのかまったくわかりませんでしたし、人から勧められるものは何でも欲しくなりました(笑)。とにかく、作品の購入となるといろんな意味で甘かった。ですが、そんなビギナー時代にジャン=ミシェル・バスキアのドローイングを購入したことだけは、当時の私にしては上出来だったと思っています」

そんな直近のディカプリオの姿を、2023年2月16日から19日までの3日間、ロサンゼルス・サンタモニカ空港で開催されたアートフェア、フリーズ・ロサンゼルス でキャッチ。ビバリーヒルズの豪邸を借り切って開催されたローンチパーティでは、ペトラ・コリンズ、ミン・スミス、ダニエル・ボウマンらアーティストによる展示「The Goddess Collection」が行われるなど、彼のコレクターとしての感性を刺激する作品が目白押しだったという。

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