W杯記念の「アメリカ」ビーバー像が大破──背景に米加関係の緊張?
- TEXT BY ARTNEWS JAPAN
ワールドカップ開催を記念してカナダで展開されているパブリックアート企画で、アメリカをテーマにしたビーバー像が何者かによって破壊された。犯人はまだ明らかになっておらず、地元当局は器物損壊事件として調べている。

カナダ・トロントの中心部に設置されていたアメリカをテーマにしたビーバー像が、何者かによって破壊された。ビーバー像はFIFAワールドカップの開催に合わせて展示されているパブリックアート・プロジェクトの一部で、地元当局は器物損壊事件として捜査を進めている。
破壊されたのは、高さ約1.2メートルの樹脂製の像だ。カナダの国獣であるビーバーをかたどった48体のうちの1体で、それぞれワールドカップ出場国をテーマに彩られている。ワールドカップ開幕に合わせてダウンタウンの公園などに設置され、企画した地元商業地区の振興団体は、参加者がアプリで各地の像を探し、進捗を記録できる街歩き型のイベントも実施している。
ビーバー像は大破しており、設置場所には現在、「恒久的に撤去された」ことを知らせる看板が立てられている。犯行の動機は明らかになっていないが、ドナルド・トランプ大統領による関税政策やカナダ併合をめぐる発言を受け、米加関係の緊張が続いていたことから、政治的な意図の有無にも関心が集まっている。現場近くにいた地元市民は、ビーバー像が地政学的対立に巻き込まれたように見えることに失意を示し、「すべての出来事を政治がらみにする必要はない」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
The World Cup beaver statues have been pleasant scenic attractions and a popular hunt around old Toronto.
— Bassam Melhem 🇨🇦 (@BassamMelh) June 28, 2026
This morning I saw the first vandalised statue. A decapitated American beaver!
The Mexican beaver nearby was fine. pic.twitter.com/e6e0s4MMqX
この像を手がけたのは、カナダ系アメリカ人アーティストのアリア・ホームズだ。彼女はビーバーの体に、自由の女神やハワイのハイビスカス、中西部の小麦畑など、アメリカを象徴するモチーフを描き込んだ。CBCによれば、ホームズは破壊行為が報じられた後に脅迫メッセージを受け取ったとして、取材を辞退しているという。今回の事件を受け、駐カナダ米大使のピート・フックストラはSNSに次のように投稿した。
「この行為によって、アメリカに損害が及んだわけではありません。被害を受けたのは、才能あるカナダ系アメリカ人アーティストと地元コミュニティ、そしてこの作品の売却益を受け取るはずだった慈善団体です」
破損していたのは、アメリカをテーマにした像だけではない。ブラジル、イングランド、イランなどをテーマにした像も被害に遭っていたが、これらは修理されたうえで、より安全な場所へ移されたという。主催団体のマーケティング担当ディレクター、ロビン・ポズナーはCBCに対し、公共空間に一時的なインスタレーションを設置する以上、破損は避けられないリスクだとしつつ、今回の出来事は「とりわけ残念」だと述べている。
トロントでは2000年にも、326体のヘラジカ像を街中に設置するパブリックアート・プロジェクト「Moose in the City」が行われており、今回のビーバー像もその流れをくんでいる。展示は8月16日まで続く予定で、ワールドカップ終了後には各像がオークションにかけられ、収益は慈善団体に寄付されるという。

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JR《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026) Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

JR《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026) Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026)を設営中のJR。Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

《La Caverne du Pont Neuf(ポン・ヌフの洞窟)》(2026)設営の様子。Photo: Éléa Jeanne Schmitter, ©2026 Atelier JR

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グランド・セントラルの地下鉄駅にも展示空間が広がる。Photo: Taurat Hossain
巨大ギャラリーと化した駅構内で展示作品を鑑賞する観客たち。Photo: John Lamparski/Getty Images

キング牧師夫妻の像はなぜ炎上したのか? パブリックアート作品をめぐる毀誉褒貶をハンク・ウィリス・トーマスが語る
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2023年のスーパーボウルのために制作されたハンク・ウィリス・トーマスの《Opportunity (Reflection)》(2022)。Photo: Courtesy of Hank Willis Thomas
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