W杯記念の「アメリカ」ビーバー像が大破──背景に米加関係の緊張?

ワールドカップ開催を記念してカナダで展開されているパブリックアート企画で、アメリカをテーマにしたビーバー像が何者かによって破壊された。犯人はまだ明らかになっておらず、地元当局は器物損壊事件として調べている。

破壊される前のビーバー像と、作者のアリア・ホームズ。Photo: Screenshot via Instagram
破壊される前のビーバー像と、作者のアリア・ホームズ。Photo: Screenshot via Instagram

カナダ・トロントの中心部に設置されていたアメリカをテーマにしたビーバー像が、何者かによって破壊された。ビーバー像はFIFAワールドカップの開催に合わせて展示されているパブリックアート・プロジェクトの一部で、地元当局は器物損壊事件として捜査を進めている。

破壊されたのは、高さ約1.2メートルの樹脂製の像だ。カナダの国獣であるビーバーをかたどった48体のうちの1体で、それぞれワールドカップ出場国をテーマに彩られている。ワールドカップ開幕に合わせてダウンタウンの公園などに設置され、企画した地元商業地区の振興団体は、参加者がアプリで各地の像を探し、進捗を記録できる街歩き型のイベントも実施している。

ビーバー像は大破しており、設置場所には現在、「恒久的に撤去された」ことを知らせる看板が立てられている。犯行の動機は明らかになっていないが、ドナルド・トランプ大統領による関税政策やカナダ併合をめぐる発言を受け、米加関係の緊張が続いていたことから、政治的な意図の有無にも関心が集まっている。現場近くにいた地元市民は、ビーバー像が地政学的対立に巻き込まれたように見えることに失意を示し、「すべての出来事を政治がらみにする必要はない」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている

この像を手がけたのは、カナダ系アメリカ人アーティストのアリア・ホームズだ。彼女はビーバーの体に、自由の女神やハワイのハイビスカス、中西部の小麦畑など、アメリカを象徴するモチーフを描き込んだ。CBCによれば、ホームズは破壊行為が報じられた後に脅迫メッセージを受け取ったとして、取材を辞退しているという。今回の事件を受け、駐カナダ米大使のピート・フックストラはSNSに次のように投稿した。

「この行為によって、アメリカに損害が及んだわけではありません。被害を受けたのは、才能あるカナダ系アメリカ人アーティストと地元コミュニティ、そしてこの作品の売却益を受け取るはずだった慈善団体です」

破損していたのは、アメリカをテーマにした像だけではない。ブラジル、イングランド、イランなどをテーマにした像も被害に遭っていたが、これらは修理されたうえで、より安全な場所へ移されたという。主催団体のマーケティング担当ディレクター、ロビン・ポズナーはCBCに対し、公共空間に一時的なインスタレーションを設置する以上、破損は避けられないリスクだとしつつ、今回の出来事は「とりわけ残念」だと述べている。

トロントでは2000年にも、326体のヘラジカ像を街中に設置するパブリックアート・プロジェクト「Moose in the City」が行われており、今回のビーバー像もその流れをくんでいる。展示は8月16日まで続く予定で、ワールドカップ終了後には各像がオークションにかけられ、収益は慈善団体に寄付されるという。

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