神獣グリフィンや女神イシスの図像が墓碑に共存──古代の異文化交流を示す墓碑群が出土

エジプトのナイルデルタにある墓地遺跡で、人物像や神話の守護獣などが彫られた多数の墓碑、陶棺や香炉、魔除けなどの副葬品が発見された。古代エジプトの末期王朝から古代ローマビザンツ帝国支配下における文化の融合を示すものとして注目されている。

テル・エル・デイル遺跡の発掘現場の鳥瞰写真。中央右寄りなどに人物像が彫られた墓碑が見える。Photo: Courtesy of the Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

エジプト北部のナイルデルタにあるテル・エル・デイル遺跡で、人物像が彫られた墓碑が20基以上見つかった。エジプト考古最高評議会(SCA)による7月末の発表を受け、エジプトのアフラムオンラインや各国の科学・文化メディアがこのニュースを伝えている。

出土した石灰岩の墓碑が注目されている理由は、彫刻の精巧さだけでなく、側面や裏面に刻まれた図像にもある。そこに描かれているのは、古代メソポタミア古代ギリシャの神獣グリフィン(鷲獅子)、ギリシャで幸運を司るとされた蛇の姿の精霊アガトダイモン、そして古代エジプト神話の豊穣の女神イシスと収穫の女神レネヌテト(ギリシャ語名テルムーティス)が融合したイシス=テルムーティスなどだ。このイシス=テルムーティスは、後にギリシャでアガトダイモンと同一視されるようになった。

考古学調査を監督するSCAのエジプト古代遺物部門責任者、モハメド・アブデル=バディエによれば、こうした図像の組み合わせはプトレマイオス朝(紀元前305年~紀元前30年)とその後の帝政ローマやビザンツ帝国の支配下(紀元前30年〜紀元後642年)におけるギリシャ文化との接触から生まれたものと考えられる。また、彫刻の質の高さは、被葬者が高い地位にあった人物であることを示しているという。さらに今回の発掘調査では、陶棺や香炉、オイルランプ、副葬品の魔除けなども出土している。

2007年に体系的な調査が再開されて以来、テル・エル・デイル遺跡では数千点もの遺物が発掘された。その出土品は、主にアッシリアによるエジプト征服後の第26王朝(紀元前664年~紀元前525年)に関連するものだったが、今回の発見はテル・エル・デイルの埋葬地がエジプト末期王朝の時代から、ローマ・ビザンツ帝国による支配の終焉まで継続的に使われていたことを示唆している。この成果は、テル・エル・デイルにおける埋葬儀礼の変遷に関する理解を深めるものとだとして、SCAのヘシャム・エル・レイシー事務局長は次のように述べている。

「今回の発見は、テル・エル・デイルが単なる埋葬地にとどまらないことを示しています。この地は、独自の社会的、文化的、宗教的アイデンティティを反映する、完成された葬祭施設として機能していたのです」(翻訳:石井佳子)

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